【応用編】因数分解で複数(2種類以上)の文字を含む式を解くコツと教え方|高校数学
高校数学において、複数の文字が含まれる多項式の因数分解の基本は、1つの文字について整理することです。高校生に教える際のポイントをやさしく解説します。
解き方のポイント
①因数分解の基本的な解き方を試してみる
②うまくいかなければ次数が最も小さい文字について整理する
なお、因数分解の基本的な解き方については、以下の記事をご覧ください。
解き方・教え方がわかる事典|中学・高校数学
このページの目次
複数の文字を含む多項式の因数分解の解き方
最初は因数分解の基本的な解き方を試してみる!
まずは、
①共通因数でくくる
②同じ形のものを別の文字に置き換える
③公式を使う
などができないかを考えましょう。
解けそうになければ1つの文字について整理してください。
例:x2ーy2ー6x+6y
これをxについて整理して、x2ー6xーy2+6yとしても、これ以上式変形をすることができません。
この問題は、基本公式a2ーb2=(a+b)(aーb)と、共通因数のくくり出しとを使って解きます。
x2ーy2ー6x+6y
=(x+y)(xーy)ー6(x-y)
=(x-y)(x+yー6)
1つの文字について整理して解く!
次数が最も小さい文字について整理します。
次数が同じ場合は、どれか1つの文字について整理しましょう。
例:a2b+acーbcーab2
字数が最も小さいのはcなので、cについて整理しましょう。
a2b+acーbcーab2
=c(aーb)+a2bーab2
=c(aーb)+ab(aーb)
=(aーb)(ab+c)
例題に挑戦!
①x2ー2y2+2xーxyー7yー3
②ー8b+2abーa2+16
③2x2ーxyー3y2ー3x+7yー2
〈解答〉
①xについて整理した後、たすき掛けを使って解きます。
x2ー2y2+2xーxyー7yー3
=x2ー(y-2)xー(2y2+7y+3)
=x2ー(y-2)xー(2y+1)(y+3)
=(xー2yー1)(x+y+3)
②基本公式a2ーb2=(a+b)(aーb)と、共通因数のくくり出しとを使って解きます。1つの文字について整理する必要はありません。
ー8b+2abーa2+16
=2b(aー4)ー(a+4)(aー4)
=(aー4)(ーa+2bー4)
③xについて整理した後、たすき掛けを使って解きます。
2x2ーxyー3y2ー3x+7yー2
=2x2ー(y+3)xー(3y2ー7y+2)
=2x2ー(y+3)xー(3yー1)(yー2)
=(2xー3y+1)(x+y-2)
複数の文字を含む多項式の因数分解の解き方を教えるポイント
2ステップで考える
ステップ1:共通因数でくくる、同じ形のものを別の文字に置き換える、因数分解の基本公式を用いるなど、まずは基本的な因数分解の解き方を試す。
ステップ2:最低次数の文字で整理して考える
基本公式を暗記しているかを確認しよう
以下の基本公式を暗記しましょう。
簡単めの問題を多めに解き、運用に慣れることが大切です。
a2+2ab+b2=(a+b)2
a2ー2ab+b2=(aーb)2
a2ーb2=(a+b)(aーb)
x2+(a+b)x+ab=(x+a)(x+b)(下の公式のうち、x2の係数が1の場合)
acx2+(ad+bc)x+bd=(ax+b)(cx+d)
式整理のパターンを覚えよう!
最低次数の文字で整理してから因数分解する場合も、ある程度パターン化できます。
x2ー(y-2)xー(2y+1)(y+3)
(図)
=(xー2yー1)(x+y+3)
のような、文字式のたすき掛けのやり方をしっかりと押さえておきましょう。
概要が理解できれば問題演習を重ねよう
教えてもらっている状態で問題が解けたとしても、独力でできなければ意味がありません。分かった気になっているだけ、ということもあります。
思考力が問われる数学であっても、反復練習は非常に大事です。簡単な問題から標準レベルの問題まで、段階を踏んで解いていくようにしましょう。
解けた問題には○、解けなかった問題には△や×をつけ、2周目以降では△や×の問題を中心にやり直すようにしてください。
因数分解の応用問題を解くには、複雑な式変形を処理することが必要です。一つ一つの式変形の意味を考えながら解き進めるようにしましょう。
オススメの問題集は、『新課程 チャート式 基礎と演習数学I+A』(数研出版)や『新課程 チャート式 基礎からの数学I+A』(数研出版)です。
前者の方が問題は易しめです。3次式の因数分解が載っていますが、いったん飛ばしても問題ありません。
お子さんの理解が進まないパターン3選とその対処法
教えてもなかなか理解してもらえない
根気よく何度も例題レベルの問題を一緒に解いてください。
ヒントを出しながら解いてもらい、徐々にヒントの量を減らすというのも有効です。
複数の文字が出てくると、途端に難易度が上がったように感じられます。特に、文字式のたすき掛けについては、時間をかけて教えてあげてください。
教えるとその場ではできるのに、お子さん一人で問題を解くと間違いが多発
このパターンは、さらに以下の2パターンに大別できます。
①問題演習が足りていない
→問題演習で基礎レベルから順番に解いていきましょう。
②教えられた時は分かった気になっている
→どこでつまずいているのかを分析、理解できていないポイントを再説明しましょう。その後、説明したポイントが理解できているかを測れる問題を演習できるとベストです。
最低次数の文字について式を整理するかどうかの判断が難所です。
様々なパターンの因数分解に取り組んでもらってください。
教えようとすると、ちょっとした間違いを指摘しただけで機嫌が悪くなり、うまくいかない
思春期で親子関係が難しく、接し方にデリケートな配慮が必要な場合があります。
1つ指摘するときは1つ以上ほめることを意識しましょう。ほめる内容は、学習を着実に進められている点などにするのがオススメです。
そして大事なことは、「根気強く、粘り強く」です。保護者の方が不機嫌になったり、イライラしたりしないように心がけてください。
子どもに教えるというのは、なかなかにストレスが溜まる作業です。保護者の方の息抜きも必要でしょう。根を詰めてやりすぎると、保護者の方もお子さんもしんどくなってしまいます。
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投稿者プロフィール
- 中高一貫校に勤めて10年になる中堅教師。卒業生を3度送り出し、中学生・高校生問わず指導経験が豊富です。自身も中高一貫校出身なので、中高一貫校のことを知り尽くしています。勉強に苦しむ生徒に向き合い、試行錯誤をする日々。そんな教師生活から得られた知見をお伝えし、全国の子供たちの力になれたらと思います。
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