浮力の定義、公式・求め方(計算方法)基礎事項と教え方を徹底解説|中学理科
中学理科で習う浮力をどのように理解しておくのがよいのか、中学生に教える際のポイントを、基礎からやさしく解説します。
ポイント
①浮力の大きさ=物体が液体に沈んでいる体積×液体の密度
②図に上向き矢印と下向き矢印を書き込んで考える
なお、次の単元については、以下の記事をご覧ください。
圧力の定義や単位、公式・求め方(計算方法)
このページの目次
浮力とは
浮力は水圧の差で生まれる
水圧は物体の面に対して垂直にはたらきます。
物体の上面にはたらく水圧は、物体を上から下に押し、物体の下面にはたらく水圧は、物体を上から下に押します。
ただし、水圧は水面から深ければ深いほど強くなるため、より深く沈んでいる物体の下面にはたらく力の方が強くなります。
この水圧の差によって上へ押し上げられる力が、浮力です。
浮力の公式
浮力の大きさは、以下の公式によって求められます。
浮力の大きさ=物体が液体に沈んでいる体積×液体の密度
なお、水圧とは異なり、液体に沈んでいる体積が一定であれば、浮力は沈んでいる深さとは無関係です。
浮力の求め方
図をきちんと書こう
次の問題を考えてみましょう。
〈問題〉3Nの物体を水中に完全に沈めた状態でばねはかりで重さをはかると、2Nであった。この物体の体積を求めなさい。
上向きの力と下向きの力がつり合うので、上向きに物体を支える浮力は、
3Nー2N=1N
です。
水の密度は1g/cm3であるので、1N→100g=体積×1g/cm3なので、
100÷1=100cm3
練習問題
〈問題〉
①図のように、重さ80g、体積200cm3の物体Aを密度が0.8g/cm3の液体に浮かべた。液体に沈んでいる部分の体積を求めなさい。
②図のように、重さ80g、体積200cm3の物体Aの上に物体Bを置いたところ、物体Bは水面上にある状態で物体Aが完全に水に沈んだ。物体Bの重さを求めなさい。
〈解答〉
①
物体Aの重さ80gを浮力の上向き矢印で支えればよいことになります。
水の密度は0.8g/cm3なので、浮力80g=体積×0.8g/cm3となるから、求める体積は、
80÷0.8=100cm3
②
水の密度は1g/cm3なので、完全に沈んでいるとき、上向きの力である物体Aにはたらく浮力は、
200cm3×1g/cm3=200g
下向きの力である物体Aの重さは80gしかないので、残りを物体Bが押さえていることになります。したがって、
200gー80g=120g
お子さんに教える際のポイント
水圧と浮力の違いを伝える
水圧と浮力の違いを理解しておけば、公式のイメージがつかみやすくなります。
水圧は深さに関係し、浮力は沈んでいる物体の体積に関係することを押さえましょう。
問題演習では図を大事にする!
上向きと下向きの矢印を書き込み、上下の力が釣り合うように考えていくのが基本です。
問題が難しくなればなるほど、この矢印の書き込みはいっそう大事になってきます。
基本問題を解く段階から癖づけておくことをオススメします。
概要が理解できれば問題演習を重ねよう
教えてもらっている状態で問題が解けたとしても、独力でできなければ意味がありません。
分かった気になっているだけ、ということもあります。
きちんと言葉の意味を理解したうえで計算式を立てているか、反復して確認しましょう。なんとなく出てきた数字を使って式を立てているだけ、というケースは意外にも少なくありません。
問題演習では、簡単な問題から標準レベルの問題まで、段階を踏んで解いていくようにしましょう。
解けた問題には○、解けなかった問題には△や×をつけ、2周目以降では△や×の問題を中心にやり直すようにしてください。
オススメの問題集は『中1理科をひとつひとつわかりやすく。改訂版』(Gakken)や『ハイクラステスト 理科』(受験研究社)です。前者が基礎~標準、後者が標準以上レベルです。
お子さんの理解が進まないパターン3選とその対処法
教えてもなかなか理解してもらえない
水圧との違いから浮力の概要を伝えたあとは、簡単な問題演習を繰り返すなかで、イメージをつかんでもらうのがよいでしょう。
矢印を図示し、上向きの矢印と下向きの矢印がつり合うようにするのがポイントです。徐々にヒントを減らし、お子さんが自力で解けるようにしてください。
教えるとその場ではできるのに、お子さん一人で問題を解くと間違いが多発
このパターンは、さらに以下の2パターンに大別できます。
1、理解したうえで暗記することができていない
少し違う角度から問われると対応できなくなります。
状況の設定が複雑な問題であっても、考え方の基本は変わりません。浮力の計算式が意味するものを押さえましょう。
なんとなく計算式を立てるのではなく、上向きの矢印と下向きの矢印を図に書いて考えることが大切です。
2、教えられた時は分かった気になっている
どこでつまずいているのかを分析し、理解できていないポイントを再説明して暗記するよう促してあげてください。
そのポイントが理解・暗記できているかを測れる問題をチョイスして演習するとよいでしょう。
教えようとすると、ちょっとした間違いを指摘しただけで機嫌が悪くなり、うまくいかない
思春期で親子関係が難しく、接し方にデリケートな配慮が必要な場合があります。
1つ指摘するときは1つ以上ほめることを意識しましょう。ほめる内容は、学習を着実に進められている点などにするのがオススメです。
そして大事なことは、「根気強く、粘り強く」です。保護者の方が不機嫌になったり、イライラしたりしないように心がけてください。
子どもに教えるというのは、なかなかにストレスが溜まる作業です。保護者の方の息抜きも必要でしょう。根を詰めてやりすぎると、保護者の方もお子さんもしんどくなってしまいます。
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投稿者プロフィール
- 中高一貫校に勤めて10年になる中堅教師。卒業生を3度送り出し、中学生・高校生問わず指導経験が豊富です。自身も中高一貫校出身なので、中高一貫校のことを知り尽くしています。勉強に苦しむ生徒に向き合い、試行錯誤をする日々。そんな教師生活から得られた知見をお伝えし、全国の子供たちの力になれたらと思います。
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