

授業の内容や英単語の暗記は、そのときは理解できても、すぐに忘れていきます。
ドイツの心理学者ヘルマン・エビングハウス(1850 – 1909)が考案した有名な実験を元にして、後年の脳研究者は、
「人は一般的に、4時間で約半分を忘れてしまう(意味を持たない記号の暗記の場合)」
という驚きの事実を紹介しています。
学校の定期テストや大学入試で、良い点数を取れるかどうかは、「どんどん忘れていく」という人間の特性に対抗して、いかに学んだ内容を定着させられるか?の勝負です。
脳科学では「使う記憶ほど定着する」と考えられており、覚えようと何度もインプットするよりも、「問題を解く」「クイズに答える」などが有効です。
- その場ですぐに|間違えた問題/解けなかった問題を解き直す
- 就寝前|間違えた問題だけをもう一度解き直す
- 朝学習|さらに解き直しを行う
- 定期テスト前|間違えた問題リストを作っておき完璧にする
このページの目次
誤った情報に注意!「エビングハウスの忘却曲線」の正しい解説
英単語の暗記や、数学の問題の解き方など、勉強における記憶の定着について考える際に、土台になるのが「忘却曲線」という考え方です。
インターネット上では、2012年頃までWikipediaに誤った情報が掲載されていた影響で、正しくない紹介をしているケースが目立ちますので、原典の記述を踏まえて改めて解説します。
エビングハウスの研究結果は「節約率」(忘れる速度ではない)
まず、エビングハウスの研究の原典はこちらです。
『Memory: A Contribution to Experimental Psychology Hermann Ebbinghaus (1885) CHAPTER VII RETENTTON AND OBLIVISCENCE AS A FUNCTION OF THE TIME』(Henry A. Ruger & Clara E. Bussenius による1913年の英訳版)
忘却曲線を紹介する際に、「●時間で◯%忘れる」という記述は、すべて誤りですので、注意しましょう。
エビングハウスが実験を行い、記録を残しているのは、節約率=同じことをもう一度覚えるのに、どれくらい時間を短縮できるか? という数値についてです。ぜひ原典を確認してください。
※なお「忘却曲線」という語そのものは、原典には記載がありません。エビングハウスが考案した実験や、その結果のデータを元に、他の研究者が言葉を使い始めたものと推測されます
エビングハウスの忘却曲線(節約率)から言える事実:数時間以内の復習が重要


最初に、エビングハウスの研究は、自分自身ひとりを被験者とした統計的価値はないデータであること、それから「意味のないアルファベット3文字の組み合わせの暗記」である点に注意してください。
そのうえで重要なポイントは2つです。
- 最初の20分や1時間でも、忘却が進行している
- 直後、または数時間以内に復習しなければ、覚え直す手間が大きく増えてしまう
初回に1時間かかっているなら、25分程度で済むということですね。
ここでは、時間が経過するほど、覚え直す手間が増え、いずれ初回とほとんど変わらなくなってしまうという一点を覚えておきましょう。
復習をしないまま放って置いて、テストの直前にだけテスト勉強をするというやり方だと、ほとんどイチから覚え直しと変わらない可能性が出てきます。
忘れる速度は「4時間で約半分」が一般的
忘れる速度については、エビングハウスの研究を出発点にして、後年の研究者が様々にデータを取っています。
前提条件を揃えることが難しいため、あくまでも参考までにという話になりますが、たとえば脳研究者の池谷裕二氏は、著書において、
はじめの四時間で一気に半分くらいを忘れてしまいます。けれどもその後は、残った記憶がわりと長持ちし、少しずつ減っていきます。
『受験脳の作り方―脳科学で考える効率的学習法』池谷 裕二 著(新潮文庫)
と紹介しています。
エビングハウス式の実験=意味を持たない記号の暗記では、「4時間で約半分を忘れてしまう」が一般的と考えればよいでしょう。
学習内容の定着には「復習」と「演習」が不可欠|3つのポイント
「4時間で約半分を忘れてしまう」と言われると、勉強をしても無駄なのでは? という気がしてしまいますが、安心してください。
エビングハウスの実験は、あくまでも意味を持たない記号の暗記。教科の勉強とは異なります。
たとえば、おもしろいと興味を向けた対象なら覚えやすいわけです。
また、記憶を定着しやすくする方法もわかっています。ポイントは3つです。
- 覚え直すとき、前回よりも簡単に覚えられる
- 覚え直すと、前回よりも忘れない割合が多くなる
- 「使う」記憶ほど定着しやすい
これらの事実はすべて、先ほども紹介した『受験脳の作り方―脳科学で考える効率的学習法』池谷 裕二 著(新潮文庫)で紹介されています。
脳研究者の著書ですので、実際に読んでみるのもいいでしょう。
勉強の本質は「復習」にある:覚え直すと労せず覚えられ、忘れにくくなる
3つのポイントから導かれる結論の1つ目は、
「勉強とは、授業で学んだ内容を定着させられるように、何度も復習をすることである」
という事実です。
学校の授業でも、塾の講義でも、教える側は生徒にわかりやすく教えようと試行錯誤していますので、基本的にあまり優劣はないと考えるべきです。
生徒もその場では「なるほど」と、理解できるケースが大半です。
問題は、その場では理解できたとしても、人はすぐに忘れていってしまう生き物であるということです。
復習をしなければ、必ず忘れてしまい、定期テストの基礎問題で失点を重ね、点数は低迷します。
問題を解くことで定着する(演習):「使う」記憶ほど定着しやすい
結論の2つ目は、
「実際に問題を解くことが大切である」
という事実です。
逆に言うと、重ねてのインプット=しっかり覚えようとする行為には、あまり効果はありません。
たとえば、定期テスト直前の勉強で、次のようなことを行っていないでしょうか。
- 教科書や参考書を読み返す
- テスト範囲の内容をまとめたノートを作成する
- 単語カードを見返す
これらはすべて非効率な勉強です。
定着に必要なのは「演習」、つまり実際に問題を解いて始めて、しまってある記憶を引き出して使うことになり、その繰り返しが定着に繋がっていきます。
数学の問題であれば、問題集を解けばいいですが、英単語の暗記や、理科・社会等の暗記要素が強い科目の場合、演習と言われてもどうすればいいのか、と感じるかもしれません。
テクニックを紹介しましょう。
英単語の暗記:見て覚えるのではなく、「単語を発音」して「意味を思い浮かべる」を早いペースで繰り返す。詳細はこちら。
理科・社会:生成AIでクイズを作成する。おすすめはGoogleのNotebookLMです。
学校から配布された授業プリントや、教科書・資料を撮影して、画像をアップロードすると、その情報に基づいたクイズの作成が可能です。極めて容易に、繰り返しの演習ができてしまいます。
※ただし生成されたクイズやその解答が必ず正確とは限りませんので、注意して使用してください
一般的な「定着」の土台は学校から出される宿題・課題|「丁寧に」取り組む
学校は授業内容の定着を目的として宿題・課題を出す
これまでの情報を整理すると、学校が宿題・課題を出す理由がわかります。
宿題は、「授業で学んだ内容を定着させられるように、自宅で復習をしてもらう」という意図に基づいた、極めて合理的なものです。
実際、中高一貫校を中心に、進学に強みを持つ学校ほど、大量の宿題を出します。
カリキュラムのしっかりした学校であれば、
- 授業をしっかり受ける
- 宿題に丁寧に取り組んで定着させる
- テスト前に復習をして完璧にする
という流れだけをこなしていれば、評定平均4.0前後がちゃんと取れるはずです。
「解き直し」はテストの点数に直結するボーナスのようなもの
ポイントは、宿題に丁寧に取り組むということ。
まず、“解答を写して提出” では意味がないのは言うまでもありません。
宿題はするのが当然だからと、あまり深く考えないケースも多いですが、「何を目的として宿題をするのか」をお子さんとしっかりコミュニケーションしておきましょう。
真面目に問題を解いているお子さんの場合は、丸付けをして満足してしまっていないか?を確認してください。
丸付けによって、定着していない箇所が明らかになります。
つまりここがスタート地点。
間違えてしまった/解けなかった問題は、解き方を確認したうえで、何度か解き直すことで、定着が進みます。
この作業は一見すると面倒なのですが、弱点を潰すわけですから、一つひとつがテストの点数に直結します。
解き直しをするから成績が上がるんだと考えると、むしろボーナスのようなものです。
《保存版》テストの点が必ず上がる復習の最適なタイミング4ステップ


学校の授業と宿題、そして定期テスト直前のテスト勉強を組み合わせて、具体的にどのように勉強を進めれば良いのか、復習の最適なタイミングを整理します。
成績を上げる、あるいは成績低迷から脱するのに、ベストな手順です。
①その場ですぐに|間違えた問題/解けなかった問題を解き直す
エビングハウスの自己実験では、一度覚えた内容を20分後に覚え直すと、完璧にするまでの時間を最初の6割も短縮できるという結果です。
単純に考えると、1時間かけて覚えたなら25分程度で済むというわけです。
しかし1日後では40分、2日後では45分もかかってしまい、最初の学習の効果が薄れてしまっています。
加えて、脳研究者・池谷裕二氏によれば、「一般的には、最初の4時間で約半分を忘れてしまう」とされ、学んですぐのタイミングの復習がとても重要だとわかります。
たとえば学校の授業で、例題をいくつか解いたときや、プリントを解いたとき等、丸付けをして間違いが発覚したら、まさにそのときがチャンスです。
定着していないところがわかったわけですから、解答・解説を読み直す、先生に質問するなどして、
- 解き方を理解する
- すぐに解き直す
という手順を踏んでおきましょう。
解き直しもさることながら、“正しい解き方” を理解することも重要です。
ここで間違った情報のまま放っておいたら、②以降の解き直しの効果が出ません。
忘れてしまってもいいので、一度は必ず「正しい解き方」をインプットすることを心がけましょう
②就寝前|間違えた問題だけをもう一度解き直す
帰宅後には、宿題に取り組むことになるケースが多いはずです。
ここでも、間違えてしまった/解けなかった問題が出てきたら、その場で理解し、解き直しをするのは①と同じです。
提出物の評価という観点でも、しっかりと解き直しが行われているノートのほうが、評価が高くなります。
宿題が終わったら、就寝前の最後に、日中に間違えて解き直しを行った問題の、2度目の解き直しを行いましょう。
1度目の解き直しから数時間というタイミング、かつ2度目ですので、定着には非常に効果が高くなります。
③朝学習|さらに解き直しを行う
- 前日の日中に間違えてしまった問題
- 宿題で間違えてしまった問題
それぞれ、2度目・3度目の解き直しを行いましょう。
睡眠により記憶の定着が進みますので、効果をかなり実感できるはずです。特に3度目の解き直しはサラッとで十分だと思います。
朝学習の時間を作るためには、言うまでもなく、睡眠時間をしっかり確保できる規則正しい生活ができるかどうかがポイントです。
忙しい毎日の中、どうやって時間を捻出するかは難題……というご家庭もあるかと思います。
脳がリフレッシュされている状態での復習は、通常よりも効果が高い可能性が高く、ぜひ取り組みたいところです。
④定期テスト前|間違えた問題リストを作っておき完璧にする
①〜③を通じて、解き直しを行った問題は、定期テストでのウィークポイントとなる可能性が高いものです。
そこで、これらの問題はシール等を貼っておく、あるいは専用ノートを作成して、すぐにわかるようにしておきます。
そのうえで、定期テスト2週間前からのテスト勉強で、改めて解き直しを行い、しっかり定着しているかを確認しましょう。
もし間違えた問題リストを用意しない場合は、問題集のテスト範囲を1周すべて解いて、どこが定着していないかを確認することから始めることになります。
事前に間違えた問題リストを作っておくか、それともテスト直前に問題集を2周・3周するか。
学校活動やご家庭の状況により、どちらがベターかは異なるはずですので、検討してください。
なお、テスト勉強の組み立て方の詳細は次の記事で紹介されていますので、合わせて参考にしてください。
家で勉強できない!やり方がわかっても実行できないなら個別指導塾で解決する手段も
成績を上げる、あるいは成績低迷から脱出する方法は、紹介してきたとおりとてもシンプルです。
「授業で学んだ内容を定着させられるように、何度も復習をする」
しかし、これが難しいというご家庭・お子さんが少なくないもの事実です。
特に、
- 家で勉強することがどうしてもできない
- アドバイスをしても思春期で強く反発する
- 復習が大事だとわかっても学習計画を立てて実行できない
このような場合は、家庭だけでなんとかしようとせず、個別指導塾や家庭教師を活用するのも、現実的な選択肢です。
個別指導塾というと、勉強ができない子向けのサービスというイメージを持つ方もいるかもしれませんが、中高一貫校生にとっては、ハイレベルな学校のカリキュラムに対応するための有効なサポートになりえます。
なぜなら、中高一貫校では授業の内容は十分に濃く、それ以上のインプット(塾での授業)は必要ありません。
逆に足りないのは、定着に欠かせない演習(=実際に問題を解くこと)。
個別指導塾では、学校で使用している教材を使って、授業で習った内容の定着に必要な演習ができる設計です。
中でも「中高一貫校専門 個別指導塾WAYS」は、500校以上の中高一貫校の生徒を指導してきた実績があり、各学校への個別対応が可能です。
- 中高一貫校専門って、どこが違う?
- 具体的にどのような方法で成績を上げる?
- 平均的な個別指導塾と同料金で、約4倍の指導時間って本当?
以上のような疑問については、次のページで紹介していますので、ぜひご覧ください。
























