私立中学から公立中学への転校のメリットと手続方法|学力不振が原因なら解決策にならないケースも
私立中学・中高一貫校のハイレベルな勉強についていけずに自信喪失。やる気を失い、学校に足が向かなくなる生徒がいます。
「こんな状況が続くなら、公立中学に転校した方がいいのかしら?」
そんな悩みを抱えている保護者の方もいるかもしれませんね。
ちょっと、待ってください。転校を決断する前にまだできることがあります。
確かに、環境を変えるのはメリットがあるかもしれません。それでも、転校先では高校受験が待っています。
大学受験を視野に入れているなら、問題を先送りしているだけで、根本的な解決策にはなっていません。
中高一貫校教師歴30年のライターが、学力不振が原因で、公立中学への転校を回避する方法を紹介します。
このページの目次
公立中学へ転校する理由はさまざま。原因がわからなければ対策できない
公立中学は義務教育なので、退学はありません。そのかわり、私立中学では、
- 「成績が悪くて高校進級が無理と判断された場合」
- 「欠席日数が多く授業についてこれないと判断された場合」
- 「非行行為により改善が困難と判断された場合」
のような状況だと、退学を申し渡され、公立中学への転校を余儀なくされます。
学力不振:高校から授業についていけないと判断されると進級が認められない
中学は義務教育なので、高校とは違い留年がありません。ただし、成績が極端に悪い(基準は学校によって違うが、評定1の科目があるなど)場合は、高校への進級が認められません。
このような場合は、他の高校を受験しなければいけないので、公立中学に転校するように申し渡されます。
また、宿題やテストなど、勉強に追われる生活に嫌気がさして、やる気を失うこともあります。
最悪の場合は、勉強に対する無気力感から不登校に。自ら転校を希望する生徒もいます。
人間関係:いじめや孤立など人間関係のトラブルから転校につながる
いじめが原因で学校に行けなくなり、転校を希望する生徒がいます。
公立中学では、義務教育なので、加害生徒を退学(転校)させることができません。一方で、私立中学は加害生徒に退学(転校)を言い渡すことができます。
あきらめずに、学校に相談してみましょう。いじめは絶対に許されるものではありません。
さらに、いじめ以外の原因で、人間関係で孤立して転校を希望する生徒がいます。
気の合う仲間ができない、仲良しグループと仲違いして孤立する。こうした人間関係のトラブルも不登校の原因です。また、自分がわがままに振る舞いすぎて孤立するケースもあります。
早急に判断せずに、子供に寄り添って状況をしっかり見極めましょう。担任の先生だけでなく、スクールカウンセラーに相談するのも有効です。
この年代では、限られた交友関係が全てと思いがちです。でも、学校には色々なタイプの生徒がいるものです。
学校を変える前に、学年が上がりクラスが変わる、部活を変える、習い事を始めてみる、のように他の環境を変えるのも一つです。
無気力・生活の乱れ:依存性のあるものからの脱却は大変。早めの対策が必須
ゲームやインターネットなど依存性のあるものにハマり、生活が乱れ、不登校になる生徒がいます。
こうしたものにハマると、抜け出すのが大変です。ダメなのはわかっていても欠席する。勉強が大事なのはわかっていても、ゲームなどを優先する。
こうなると、成績が低迷し、高校に進級できない可能性が高まります。早めの対策が必要です。
レアケースですが、非行が原因で転校を申し渡されることがあります。経験上、学校以外の交友関係が非行行為の引き金になることが多いようです。こちらも同様に早めの対策が大事です。
勉強以外にやりたいことがある:頭ごなしの否定はNG
スポーツや芸術など勉強以外にやりたいことがあり、勉強中心の生活ではなく、時間のゆとりのある生活を求めて、転校を希望する生徒がいます。
何かにハマるのは決して悪いことではありません、頭ごなしの否定はNG。勉強と両立している人は少なくありません。あらゆる可能性を親子で話し合ってみましょう。
私立中学から公立中学に転校するメリット・デメリット
転校によって環境に多くの変化が起こります。こうした変化はメリットにもデメリットにもなるので、冷静に考える必要があります。
勉強の変化:勉強でついていきやすくなるが、根本的な解決策とは限らない
大学受験に向けて先取り学習をしている私立中学とは違い、公立中学では、学習指導要領に従って、社会の形成者として基礎的な内容の習得を目標としています。
メリット
学習内容が下がるので、勉強についていきやすくなります。
結果として、勉強に追われる心理的な負担が軽減。また、勉強に費やす時間が減るので、時間のゆとりができて、勉強以外の自分の好きなことに打ち込むことができます。
デメリット
高校受験をしなければいけません。
高校受験では内申点が大事です。転校する前の内申点が持ち越されるので、私立中学での内申点が低いと高校受験で不利になります。
東京都の場合は中3の内申点のみが対象です。中3で転校して、中3の成績が悪い人は特に注意が必要です。
受験では合否の心理的ストレスがあります。勉強の負担を減らすつもりで転校しても、受験を控え、必ずしも望んだ状況にはならない可能性があります。
人間関係の変化:人間関係をリセットできても、新たな人間関係を築くのは簡単でない
転校によって、これまでの人間関係をリセットできます。人間関係で悩んでいる生徒にとっては、新しい出会いは良いきっかけになるかもしれません。
メリット
私立中学で「いじめ」や「孤立」で悩んでいた生徒にとっては、人間関係をリセットできるのは良いことです。
地元が同じ生徒ばかりなので、生育環境も似ていて、価値観が合うかもしれません。また、幼馴染が同級生にいると、心強いですね。
デメリット
「受験で私立に行ったのに、勉強についていけずに戻ってきた。」とレッテルを貼られることがあります。
それ以上に、周囲の人はそんなことは思ってもいないのに、本人が勝手にそう思い込むケースもあります。
また、「地元中学を見下して、私立に行ったのに、なんで戻って来たんだ。」と露骨に嫌な空気感を出す生徒がいます。
「制服が可愛かった」「食堂のメニューが・・」「行事で○○に行った」など、些細な私立中学の話題を出すと鼻についてしまうことも。
公立中学でもすでに人間関係は出来上がっているもので、特に女子は、新たにグループに入るのはストレスになるケースもあります。
私立中学から公立中学へ転校する際の手続き方法
ここからは、実際の手続き方法を解説します。
在籍する私立中学から必要書類をもらう
在籍している私立中学に転校の意思(転校届)を伝えましょう。そして、次の2つの書類を受け取ります。
- 在学証明書
- 教科書用図書給付証明書
義務教育なので、地元の公立中学への受け入れが断られることはありません。
因みに、私立中学への転校は、すでに入試を実施している建前上、転居のようなやむ得ない事情がない限り、転入を受け入れない学校がほとんどです。
私立中学への転校を希望する場合は、事前に電話などで問い合わせてください。
書類を受け取るまでに、1週間以上かかることもあるので、日程にはゆとりを持っておきましょう。
地元の役所から必要書類をもらう
居住する役所に行って、次の書類を受け取ります。
- 転入学通知書
転入先の公立中学に必要書類を提出する
私立中学と役所で受け取った次の3つの書類を公立中学に提出します。
- 在学証明書
- 教科書用図書給付証明書
- 転入学通知書
以上で手続きが終了です。公立中学から転入日の指定があります。それまでに、制服・カバンなど必要なものを揃えておきましょう。
体操服や教材など細々としてものはその都度、買い替える必要が出てきます。
学力不振が原因なら転校によって好転するとは限らない
ここで一つだけ伝えたいことがあります。
それは、「学力不振が転校の原因なら、転校によって事態が好転するとは限らない」ということです。
なぜならば、学力不振が原因で、勉強のやる気を失って、諦めてしまっている生徒の多くは、自己肯定感が下がっているからなのです。
子どもが諦めてしまう原因は自己肯定感の低下
勉強には得意・不得意があるので、成績が良い人もいれば、悪い人もいます。それ自体は当然です。
ましてや、私立中学では、ハイレベルな学習が要求されるので、対応できずに成績が低迷する生徒が、一定数出てしまうのは仕方がありません。
しかし、高校に進級できないという状況が目の前に迫ると、危機感を感じて勉強に取り組むものです。
そうはならず、諦めてしまうのには、自分に自信が持てない何かがあるはずなのです。
その大きな原因が自己肯定感の低下です。
親が責めては逆効果
私立中学では、勉強ができないために、劣等感を感じてしまうことがあります。
「えっ、こんな問題も解けないの?」
このように言われると、周囲はそんなつもりがなくても、自分だけ問題が解けないと落ち込むものです。
一度、成績が低迷すると、そこから抜け出すのは大変です。「深海魚」という言葉がありますが、成績が下位に低迷して抜け出せない生徒のことを指します。
私立中学の生徒は精神年齢も高く、勉強ができない人をバカにするような雰囲気はないのですが、こんな状況が続くと、やはり自分に自信が持てなくなるものです。
勉強以外に活躍の場がなければ尚更です。そして何より、「なんでこんな点数なの?」と親が成績が悪いことを責めると、ますます自分に自信が持てなくなってしまいます。
自己肯定感が下がったまま、公立中学に転校しても、高校入試を乗り越えることができません。
私立中学に合格した時に、親子で喜んだことを思い出せば、学力不振が原因で公立中学に転校して後悔しませんか?
親は子供の良さを認め、「勉強は専門家のサポートを依頼」が最適解
子供が熱中していることの応援から始める
親は、子供が勉強できないことを責めては絶対にダメです。私立中学に合格したこと自体がすでに立派だと思いましょう。
勉強というフィルターを通さずに子供と接すれば、子供の良さが見えてきます。
子供が熱中していることを応援してみましょう。それが、ゲームでも音楽でも構いません。そうすると自然とポジティブな声かけが増えるはずです。
勉強の口出しはNG。専門家に任せてください。
子供は認めようとはしないかもしれませんが、すでに一人で対応できないレベルになってしまっています。
ちょっと工夫をすれば、勉強のやる気を回復することができます。
ポイントは「成功体験」と「1対1」
「成績を上げる」では目標が漠然としています。「定期テストの点数を伸ばす」ことを目標にしてみましょう。
1点でも点数が伸びること自体が成功体験で、子供のやる気につながっていくからです。
さらに、ポイントは1対1。
集団指導では、学校と同じで、多くの人に埋もれてしまいます。個別指導だと自分の成長が実感できます。
例えば、個別指導だと、昨日までできなかった問題が、今日できるようになれば、先生は必ず、「できるようになったね」と成長を認めてくれます。
私たち教育に携わるものは、「小さな成長を承認すること」が子供の成長に不可欠なのを知っているからです。
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私立中学から公立中学に転校を決断する前に、もう一度、学校の勉強に向き合いたいなら、「中高一貫校専門 個別指導塾WAYS」が役に立てるかもしれません。
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投稿者プロフィール
- 中高一貫校指導歴30年のベテラン教師です。勉強が得意な生徒から苦手な生徒までたくさんの生徒を指導してきました。念願叶っての中高一貫校だと思います。充実した6年間を過ごして欲しいものです。ベテランならではの視点で悩みに寄り添ったアドバイスを心がけます。ちなみに2人の子供も中高一貫校に通っています。保護者としての目線も大事にします。
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