苦手な英訳問題をシステマティックに考えよう!【修飾語編2:語・句・節と語順】

梅一輪 一輪ほどの 暖かさ

服部嵐雪

関東でも少しずつ梅の花が咲き始めた頃合いでしょうか。春を予感しつつ、充実の2月後半にしましょう!

今回は英語における文節や単語である「語・句・節」について学んでいきます。前回、日本語の主部、述部、修飾部について説明しましたが、それの英語版と考えてください。文型通りに単語だけを並べた文以外にも、句と節で構造が複雑になった文はたくさんあります。等位接続詞や関係代名詞が出てきてから英語が難しく感じるようになった人は多いのではないでしょうか。
今回も日本語からの翻訳をメインに「語・句・節」について学んでいきましょう!

今回の例文はこちらです。

『ある朝、グレゴール・ザムザが気がかりな夢から目ざめたとき、彼は自分がベッドの上で一匹の恐ろしい毒虫に変ってしまっているのに気づいた。』

フランツ・カフカの名作、『変身』の冒頭です。今までよりもずっと長い例文ですが、実は「語・句・節」が理解できれば英訳は苦ではないのです。

語・句・節とは何か

今回はどちらかと言うと英語の解説が多いです。と言うのも、「語・句・節」は英語の中でも最初は分かり難い範囲だからです。本当は英文法の中でも根幹をなしている範囲なので、無意識のうちにできている人も多いです。しかしだからこそ、ある程度英語ができるようになってから細かく考え始めると難しく感じてしまうのです。

日本語では以下のような図式があります。

文>文節>単語

単語が集まって文節になり、文節が集まって文になります。だから文字数は単語よりも文節、文節よりも文のほうが多くなるのは当然です。

英語でもこのような図式は存在します。

文>節>句>単語

しかしながらこの図式、正確ではないです。句は単語が集まったものですが、節は句が集まったものではないからです。また、節よりも句のほうが単語数が多くなることもままあります。

では、一体句や節とは何でしょうか。ここで重要になるのは、やはりと言いますか、主語と動詞なのです。どこまで行っても英語は主語と動詞が最重要なのです。

句も節も単語のまとまりであることに変わりはありません。違いは、句にはSVが入っていないこと。節にはSVが入っていることです。2つ例文を挙げてみましょう。

“I saw a man running in the park.”
“I saw a man who is running in the park.”

両方とも日本語訳は「私は公園内を走っている男性を見た。」になります。「公園内を走っている」という修飾部が少々違っているだけです。

“running in the park”
“who is running in the park”

1つ目は分詞、2つ目は関係代名詞を使っていますね。ここで注目すべきは、2つ目ではSが”who”、Vが”is running”と取れることです。文の中に文が入っているようなものです。このようにSVを含んで一かたまりとなっているものを節と呼びます。節には今のような関係代名詞や接続詞が付き物です。
それに対して分詞にはSが見当たりません。”running”は動詞”run”の現在分詞形ですが、それに対応する主語がありません。しかしながら”running in the park”で一つのまとまりであることは明白です。このようなSVを含まないものを句と呼びます。”running in the park”で「公園内を走っている」という意味の句ですし、”in the park”でも「公園内を」を表す句になります。また、基本的に英語では文型を無視して2つ以上名詞を並べたり、好きな箇所に動詞を置くことはできません。そこで、前置詞+名詞、前置詞+動名詞などの形を用います。

まとめると接続詞なら節、前置詞なら句を意識すると語・句・節が分別し易いです。

 

句や節には種類があります。名詞句・形容詞句・副詞句、名詞節・形容詞節・副詞節です。主語・目的語・補語になっている句と節は名詞句・名詞節、名詞を修飾しているものは形容詞句・形容詞節、動詞・形容詞・文全体を修飾しているものは副詞句・副詞節となります。それぞれのはたらきや文型に着目して分類して行きましょう。

では、この語・句・節は、英訳問題においてどのように使い分けていくのでしょうか。
前述の例文では、句を使っても節を使っても意味は同じでした。意味が同じということはどっちも正解でしょうか。その通り。どちらも正解です。まとまりの中に動詞が含まれる場合、句と節で同じ意味を作れることが多いです。関係代名詞を分詞にしたり、”if”や”when”といった接続詞なら分詞構文に変えることが可能です。

ただしそれができない場合も当然存在します。そもそも動詞を含まなければ上記の法則は成り立ちません。だからといって日本文で動詞を含んでいなければ必ず句で表すかというと、そうでもありません。一つの指標として動詞を含むかどうかに注目すべきですが、例外もたくさん存在することは頭に入れておきましょう。

日本文から語・句・節を考える

さて、ここからは前回、前々回同様に日本語から英訳問題を考えていきましょう。まずはいくつか例文を挙げます。

1 『私は彼が言ったことを覚えている。』
2 『私は彼が言った台詞を覚えている。』
3 『彼が台詞を言った後、私は彼と握手をした。』

兎にも角にも文節分けをします。

1 私は/彼が/言った/ことを/覚えている。
2 私は/彼が/言った/台詞を/覚えている。
3 彼が/台詞を/言った/後、私は/彼と/握手を/した。

ここで文型を考えていくので、主語と述語に注目するんでしたね。そう言えば主語は「は・が・も・こそ・さえ」がついている文節です。主語に対応した「なんだ・どうする・どんなだ」にあたる文節が述語でしたね。それを踏まえて探してみるとどうなるでしょうか。

1 「私は/覚えている」・「彼が/言った」
2 「私は/覚えている」・「彼が/言った」
3 「彼が/言った」・「私は/した」

何ということでしょう。主語と述語のペアが2つずつ見つかってしまいました。これではどれを主語にして英訳すれば良いのか分かりません。

そこで、前回の記事で書いた文節のまとまり、「部」にできる部分を考えてみましょう。

1 「彼が/言った」…「ことを」に対する修飾部→「彼が/言った/ことを」…目的語
2 「彼が/言った」…「台詞を」に対する修飾部→「彼が/言った/台詞を」…目的語
3 「彼が/台詞を/言った」…「後」に対する修飾部→「彼が/台詞を/言った/後」…「した」に対する修飾部

このように、1~3の全てで「彼が/言った」は修飾部に含まれてしまいました。日本語でも節という概念は存在します。英語ではSVのペアだったものが、日本語では主語・述語のペアとなります。

 

さて、これらの節を英訳したとき、名詞節、形容詞節、副詞節の一体どれになるのでしょうか。

1 「彼が/言った」…「ことを」に対する修飾部→「彼が/言った/ことを」…目的語

「~こと」や「~もの」は英語では”thing”や”fact”を使わないということは以前解説しました。節の場合、これらは関係代名詞”what”を用います。また、「~という事実」なら”that”、「~かどうか」ならば”if”など、対応する関係代名詞や接続詞があることを覚えておきましょう。

1 「彼が/言った/ことを」→”what he said”

となります。重要なのはこれが目的語だということです。目的語になれるのは名詞だけです。すなわちこの”what he said”の節は名詞の役割をしなければなりません。よってこの節は名詞節となるのです。
この解説では先に英訳してから名詞節だと明かしましたが、実際にやるときは逆のプロセスです。

1 「彼が/言った/ことを」→目的語→名詞節→「~ことを」なので関係代名詞”what”で名詞節をつくる→”I remember what he said.”

 

同様に2番の例文も見てみましょう。

2 「彼が/言った」…「台詞を」に対する修飾部→「台詞」は名詞なので、「彼が/言った」は連体修飾語→形容詞節→関係代名詞を用いて”which/that”で形容詞節をつくり「台詞」を修飾する→”I remember the words which he said.”

名詞を修飾するのは形容詞ということから、「彼が/言った」が形容詞節であるとわかります。形容詞節は関係代名詞の他にも、場所ならば”where”のように関係副詞を使うこともあります。こちらもまとめて覚えてしまいましょう。

 

問題は3番の例文です。「彼が/台詞を/言った」は「後」という名詞を修飾しているわけですが、先ほどと同じように形容詞節で良いでしょうか。駄目なのです。「彼が/台詞を/言った/後」全体を見ると、述語である「した」を修飾しています。これは1番の例文と同じですが、1番は目的語であったのに対して今回は目的語ではない修飾部です。「(握手を)した」が英訳した時に動詞になることを予想すると、この「彼が/台詞を/言った/後」は動詞を修飾する副詞の役割をしなければなりません。だからこの節は副詞節となるのです。

3 「彼が/台詞を/言った/後」…「した」に対する修飾部で、かつ目的語ではない→副詞節→「~後」なので接続詞”after”で副詞節をつくる→”After he said words, I shook hands with him.”

副詞節には、時、場所、条件、原因・理由、様態など様々な種類があります。それぞれの日本語に対応した接続詞があるので、丸暗記しましょう。覚えることが多いですが、適切な節をつくるためには必要不可欠な知識なのです。

 

節の作り方をまとめます。

1 日本文を文節に分ける
2 主語と述語のペア(節)を探す
3 2つ以上ペアがあった場合、修飾部となる節を見つける
4 「~こと」など(英訳したときに関係代名詞などになる言葉)で終わっている節→主部、述部、目的語になっている→名詞節
5 一般的な名詞を修飾している→形容詞節
6 述語・述部を修飾しているが目的語ではない→副詞節

例文の英訳

さて、遂に最初の例文の英訳です。兎にも角にも文節分けをします。

『ある朝、グレゴール・ザムザが気がかりな夢から目ざめたとき、彼は自分がベッドの上で一匹の恐ろしい毒虫に変ってしまっているのに気づいた。』

ある朝/、グレゴール・ザムザが/気がかりな/夢から/目ざめた/とき/、彼は/自分が/ベッドの/上で/一匹の/恐ろしい/毒虫に/変ってしまっているのに/気づいた。

主語・述語の前に「ある朝」についてです。これは独立語です。日本語の独立語を英訳する場合、英語でも独立語になります。そのため、”One morning,”で大丈夫です。

 

主語・述語はどうなるでしょうか。

「グレゴール・ザムザが/目ざめた」・「彼は/気づいた」

2つペアがありますね。先ほどのプロセスで節について考えましょう。

「グレゴール・ザムザが/目ざめた」→「グレゴール・ザムザが/気がかりな/夢から/目ざめた/とき」…「気づいた」を修飾し、かつ目的語ではない→副詞節→「~とき」なので接続詞”when”で副詞節をつくる

これで副詞節になることが分かりました。文型について考えて見ましょう。

「彼は/気づいた」→「何はどうする」
「変わってしまっているのに」は「気づいた」の対象を表し、「自分」=「毒虫に変わってしまった」が成り立つ→SVOC
「気づいた」など、五感を表す第5文型は知覚動詞を用います。

 

文型も分かったところで全文英訳と行きたいですが、一旦他の修飾語・修飾部について洗い出します。

「気がかりな」…「夢から」を修飾→名詞を修飾するので形容詞
「気がかりな/夢から」…「目ざめた」を修飾→動詞を修飾するので副詞句
「ベッドの/上で」…「変わってしまっているのに」を修飾→動詞を修飾するので副詞句
「一匹の」…「毒虫に」を修飾…名詞を修飾するので形容詞
「恐ろしい」…「毒虫に」を修飾…名詞を修飾するので形容詞

1単語ならば語、2単語以上になるものは句となります。実はこの修飾語の洗い出し作業、節の分類と同じくらいに重要なものです。一つには形容詞(句)・副詞(句)を判別することができる。そしてそれ以上に重要なのが、修飾・被修飾の関係を明確にすることです。今回のように文自体が長く、修飾語が沢山ある場合、英訳しようとした時に語順が分からないことが多々あります。そういった場合に役に立つのがこの作業なのです。

例えば「ベッドの/上で」は「変わってしまっているのに」を修飾していますが、この2つの間には「一匹の/恐ろしい/毒虫に」と3文節も挟まれています。日本語と英語では語順が違うため、日本文と同じ順番で英訳しては×となってしまいます。この修飾語の洗い出し作業をやっておけば、「ベッドの/上で」が「変わってしまっているのに」を修飾するようにくっつけて書くことが意識できるのです。

 

それでは英訳です。

「ある朝」…”one morning”
「グレゴール・ザムザが」…”Gregor Samsa”
「気がかりな」…”troubled”
「気がかりな/夢から」…”from troubled dreams”
「目ざめた」…”woke”
「とき」…”when”
「彼は」…”he”
「自分が」…”himself”
「ベッドの/上で」…”in the bed” ※掛け布団を被ってその中にいる場合は”in”を使います
「一匹の」…”a”
「恐ろしい」…”horrible”
「毒虫に」…”into a vermin” ※”vermin”は「害虫」なので、「毒虫」は意訳です
「変わってしまっているのに」→「~にかわってしまっているのに」…”transformed”
「気づいた」…”found”

文型と節、修飾・被修飾に注意して並び替えましょう。

One morning, when Gregor Samsa woke from troubled dreams, he found himself transformed in his bed into a horrible vermin.

“when”で「グレゴール・ザムザが/気がかりな/夢から/目ざめた/とき」の節が始まっています。さらに、”transformed in his bed into”と、「ベッドの/上で」が「変わってしまっている」を修飾するように、”into a horrible vermin” 「一匹の恐ろしい毒虫に」の前に割り込んで並んでいます。ややこしい語順であっても、節の整理と修飾・被修飾の関係把握できっちり並べることができるのです。

まとめ

今回は語・句・節についてがメインでした。単語をかたまりで捉えることは最初は慣れないかも知れません。しかし今回はさらに上を目指し、分けたかたまりが何の役割をしているかを考えられるようにしましょう!

『節』
1 日本文を文節に分ける
2 主語と述語のペア(節)を探す
3 2つ以上ペアがあった場合、修飾部となる節を見つける
4 「~こと」など(英訳したときに関係代名詞などになる言葉)で終わっている節→主部、述部、目的語になっている→名詞節
5 一般的な名詞を修飾している→形容詞節
6 述語・述部を修飾しているが目的語ではない→副詞節

『語・句』
1 全ての修飾語の修飾・被修飾の関係を洗い出す
2 被修飾語の直前、もしくは直後に修飾語を並べる

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