苦手な英訳問題をシステマティックに考えよう!【修飾語編1:用言の活用】
こんにちは。2月に入り段々と暖かくなっていくでしょうか。春が待ち遠しいですね。
さて、前回は英訳の中でも最も基本となる文型について学びました。主語=S、動詞=V、目的語=O、補語=Cの並び方で英語の文は5種類に分けられましたね。確かに、文型を決める要素はSVOCの4つなのですが、文はそれだけでできているわけではありません。種々様々の修飾語=Mが文に彩りを持たせているのです。
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今回は修飾語にスポットライトを当てて英訳問題を考えて行きましょう!
今回の例文は、
『最も偉大な勝利は自分に打ち克つことである。』
哲学者プラトンの格言です。最初に前回の方法で行けるところまでは訳してしまいましょう。
- 1. 主語を探す…「勝利は」→”the victory”
- 2. 述語を探す…「ことである」→「ことだ」→「~は…だ」→is(be動詞)
- 3. SVの順番に並べる…”The victory is”
- 4. 「勝利は(打ち克つ)ことである」→「勝利」=「(打ち克つ)ことである」→主語=述語→S=C→”SVC”
修飾・被修飾の関係
まずは前回と同じように日本語を考えて行きましょう。現代文の授業で文節を習った際に、「文節と文節の関係」についても習ったと思います。主語・述語の関係、補助の関係などがありましたね。その中でも今回はタイトル通り修飾・被修飾の関係について考えていきます。
「修飾」とはなんでしょうか。「修飾 意味」で検索すると次のように出てきます。
しゅう‐しょく〔シウ‐〕【修飾】 の意味
[名](スル)
1 美しく飾ること。よく見せるために上辺を飾ること。「過大に修飾して話す」
2 文法で、ある語句が他の語句の意味を限定したり詳しくしたりすること。
出典:デジタル大辞泉
もちろん今回は2番の意味です。説明や情報を付け加える言葉が修飾語です。そして説明や情報が付け加えられた言葉が被修飾語となります。例文の中で「自分に/打ち克つ」という2文節があります。「打ち克つ」だけでも言葉としての意味がありますが、一体何に打ち克つのかが分かりませんね。そこで「自分に」という文節が加わることによって「打ち克つ」対象の情報が加わるのです。
例文を文節に分けてみましょう。
『最も偉大な勝利は自分に打ち克つことである。』
↓
最も/偉大な/勝利は/自分に/打ち克つ/ことである
実を言うと主語の「勝利は」と、述語の「ことである」以外は全て修飾語です。世界中に溢れている言葉は大部分が修飾語なのです。
では各々の修飾・被修飾の関係を見ていきましょう。
- 修飾→被修飾
- 「最も」→「偉大な」
- 「偉大な」→「勝利は」
- 「自分に」→「打ち克つ」
- 「打ち克つ」→「ことである」
「最も」は「偉大な」を修飾していますが、「偉大な」もまた修飾語です。このような場合、「最も/偉大な」の2文節で一つの修飾部となります。さらに「最も/偉大な」は最終的に主語の「勝利は」を修飾しています。そこで、これらをまとめて「最も/偉大な/勝利は」の3文節で主部となるのです。同様に考えると、「自分に/打ち克つ」で修飾部、最終的に述語「ことである」を修飾しているので、「自分に/打ち克つ/ことである」で述部となります。
前回まで扱っていたのはあくまでも1文節の主語と述語でした。これからは修飾語と修飾部までを考え、主部・述部などの幾つかの文節をひとかたまりに括るようにしましょう!
用言が修飾語になる
この時点で何か気づくことはないでしょうか。「自分に/打ち克つ/ことである」ですが、「打ち克つこと」を英語にしようとした時に修飾語に関して考えるのは不自然に思われるかも知れません。不定詞の名詞的用法、もしくは動名詞を使うことが一瞬で分かる人が多いと思います。その考え方は正しいです。実際に本例文でもこの部分は不定詞の名詞的用法を使います。しかしながら、あくまでもこの記事のテーマは「システマティックに」英訳問題を考えることです。前回と同様に、たとえ直感で英訳が分かったとしても、そのプロセスが分かっていないといつか躓いてしまうのです。
ところで、皆さんは「活用」という言葉を知っているでしょうか。もちろん知っていますよね。日本語では動詞、形容詞、形容動詞、助動詞は、下に来る単語によって形が変わるというものです。「未然・連用・終始・連体・仮定・命令」ですね。活用形などを覚えるのに苦労した人も多いかも知れません。この「下に来る単語で形が変わる」というものですが、実はこの表現は完全には正しいものではありません。例えば動詞の連体形ですが、思い返すと終止形と形が同じですよね。「する」という動詞ならば、終始形は「する」、連体形も「する」です。「する/こと」とあれば、こちらが連体形ですね。なぜならば、「こと」が名詞(体言)であり、「する」は「こと」を修飾する連体修飾語であるからです。動詞が連体修飾語になっているから連体形と呼ぶのです。
かなり日本語の文法説明になってしまいました。しかしもう少しだけ続けます。
前回、日本語は主語と述語が重要だという話をしました。その述語ですが、述語になる品詞は何でしょうか。これは体言と用言、つまり名詞(代名詞)、動詞、形容詞、形容動詞の4つです。
これに対して英語ではSとVが重要でした。日本語と大きく違うことは、日本語における述語が必ず動詞になるということ。たとえ「私は生徒だ。」という「~だ」型の文であっても、英語では”I am a student.”とbe動詞を使うのです。
もう一点、英語では動詞に色々な形がありました。先ほどの不定詞、動名詞もそうですし、現在分詞や過去分詞もありましたね。この動詞の形が変わるということ、日本語における「活用」と似ていませんか? 日本語では第一に述語になりえる動詞も、活用によって連体修飾語や連用修飾語にもなる。英語において名詞を修飾するのは形容詞です。不定詞の形容詞的用法、これは動詞を形容詞として使う方法です。日本語でも英語でも動詞を形容詞(連体修飾語)にする方法が存在しているのです!
動詞の活用
日本語の動詞は、そのほとんどが英語でも動詞になります。英語で重要なのは動詞。形を変えて色々な機能を持つのも動詞です。だから日本語の文で動詞が修飾語になっている場合、英語ではそれがどのような形で表現されるのかに注意しなければなりません。
例文では「自分に/打ち克つ」が「ことである」を修飾する連体修飾部です。「打ち克つ」は明らかに動詞ですね。ここまでの説明だと、動詞が連体修飾語になっているのだから、英語では動詞を形容詞に変える不定詞の形容詞的用法、現在分詞、過去分詞の3つが思いついてしまいます。ところが、この方法では上手くいかないのです。
「ことである」の「こと」を英単語にしてみてください。”a thing”ですか? それは「事物」という意味であって「こと」とは違いますね。”a matter”も「事柄」という意味であって「こと」とは違います。英語では「こと」にあたる単語は存在しないのです。なぜならば、不定詞の名詞的用法や動名詞、今回は扱いませんが、名詞節を作る接続詞など、これらの中に「こと」の意味が含まれているからです!
だから、今回の例文である「打ち克つ/ことである」を英訳する際にはbe動詞+不定詞の名詞的用法、もしくは動名詞を使うのです。今回は原文に従って不定詞にしましょう。
- 1. 「打ち克つ」は「ことである」を修飾する連体修飾語
- 2. 「~すること」は不定詞の名詞的用法や動名詞を用いる
- 3. 「打ち克つ」=”conquer”→”to conquer”
- 4. “The victory is to conquer”
動詞の後には目的語か補語がつく場合があります。こちらも日本語では「自分に/打ち克つ」の「自分に」は「打ち克つ」を修飾する連用修飾語です。しかしながら、意味自体を考えると「自分に」は「打ち克つ」の対象を表す目的語となります。このような場合は、先に動詞と目的語に英訳してしまい、それ自体を不定詞や動名詞に変えて行きましょう。前述のプロセスに少し追加します。
- 1. 「自分に/打ち克つ」は「ことである」を修飾する連体修飾部
- 2. 「~すること」は不定詞の名詞的用法や動名詞を用いる
- 3. 「自分に」は「打ち克つ」の対象を表すため、目的語である
- 4. 「自分に/打ち克つ」=”conquer self”→”to conquer self”
- 5. “The victory is to conquer self”
形容詞・形容動詞の活用
形容詞と形容動詞ですが、名前からして形容詞に英訳すればよいでしょうか? 言わずもがなそれだけではいけません。単語をそのまま英語に変換しても上手く英訳できないように、形容詞・形容動詞もそのまま形容詞にすれば良いわけではないのです。
では何が重要かと言うと、先ほどから少しずつ話に出てきている連体修飾と連用修飾です。日本語では、連体修飾は体言(名詞・代名詞)を修飾、連用修飾は用言(動詞・形容詞・形容動詞)を修飾するものです。それに対して英語では、形容詞は名詞を修飾、副詞は名詞以外を修飾するものです。名詞以外と言うと分かりにくいので、今回は動詞と形容詞を修飾するものだと考えましょう。
ここで例を2つ出します。
1 「素早い/動き」
2 「素早く/動く」
両方共「素早い」という形容詞が次の単語を修飾していますね。「素早い」は形容詞ですので、同じ意味の形容詞の”quick”を使って英訳してみましょう。
1 ”the quick motion”
2 ”move quick”
どちらも正解です。ただし、1番と2番には明確な違いがあるのです。実はこの”quick”という単語、形容詞でもあり、副詞でもあるのです。名詞を修飾するのは形容詞でしたね。1番は”motion”という名詞を修飾しているのでこちらは形容詞になります。動詞や形容詞を修飾するのは副詞でした。2番は”move”という動詞を修飾しているので副詞になります。そして困ったことに、この”quick”は副詞の場合、「迅速に」など、「素早い」よりも急いでいるような意味になってしまうのです。だから2番の訳は正確とは言えません。”move quickly”と、「素早く」という意味の副詞に換えてあげるのが確実です。
さて、一旦日本語に戻ってみると、「素早い」と「素早く」はどちらも「素早い」の活用形です。1番は連体形、つまり連体修飾語、2番は連用形、つまり連用修飾語になっています。その点に気を使わないで訳してしまうと、今のように細かいミスが出てしまうのです。
また、英語の形容詞と副詞には「級」があります。そのままの意味の原級、他の何かと比べる比較級、全て/指定された範囲の中で一番という意味の最上級の3つです。こちらは、日本語では対応する文法がありません。動詞の目的語などと同じように意味から考えて行きましょう。
形容詞、形容動詞は以下のように考えましょう。
- 1. 形容詞・形容動詞の活用形を調べる
- 2. 連体形ならば同じ意味の形容詞に、連用形ならば副詞に変換
- 3. 意味を考えて、原級・比較級・最上級を決定する。
さて、例文に移りましょう。残りは「最も/偉大な/勝利は」だけですね。「最も/偉大な」が修飾部です。「偉大な」は「偉大だ」という形容動詞ですので、上記のプロセスを用いましょう。
- 1. 「偉大な」は「偉大だ」の連体形
- 2. 連体形なので、同じ意味の形容詞”great”に変換
- 3. 「最も/偉大な」は最上級なので、”the greatest victory”
まとめ
今までのまとめとして例文の英訳を完成させます。
『最も偉大な勝利は自分に打ち克つことである。』
“The greatest victory is to conquer self.”
※原文では、「最も偉大な」の部分が異なり、”The first and best victory is to conquer self.”となっています。こちらの方が英語らしく重みがありますね。
プロセスは以下の通りです。
- 1. 文節に分け、修飾・被修飾の関係を洗い出す
- 2.修飾・被修飾の関係から、修飾部、さらには主部・述部に整理する
- 3.主部と述部から文型を決定する(前回の範囲)
- 4.動詞・形容詞・形容動詞が修飾語になっている部分に着目する
- 5.動詞は活用形から英語へ、形容詞・形容動詞は活用形から形容詞か副詞に変換後、意味から「級」を決める
いかがでしたでしょうか。今回は修飾語とは何かから、用言の活用とその英訳を行ってきました。用言は日本語でも重要な品詞であると同時に、英訳においても様々なルールと文法を考えなければなりません。もう一度の現代文の文法を復習することが英語力のアップにも繋がります。頑張って勉強して行きましょう! 己に克つことが最高の勝利ですよ! 次回はその他の修飾語について考えて行きましょう!
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