共働き家庭でも、中学受験を成功させることは可能です。
「家庭内の役割分担」「外部サポートの活用」「子供の自立」の3点を工夫しましょう。
自身の2人の子供も中学受験を経験した、中高一貫校教師のライターが、共働き家庭ならではの課題と、それを乗り切る工夫を解説。
合わせて、2人の子供の中学受験時のリアルな体験談を紹介します。
このページの目次
共働きは約7割(令和3年データ)。中学受験をする家庭でも珍しくない
内閣府の調査によると、令和3年で、約7割の家庭が共働き世帯です。共働きが当たり前のライフスタイルになったと言えそうですね。
この現実を踏まえても、共働き家庭が中学受験にチャレンジするのは決して珍しいことではありません。
出典:特-8図 共働き等世帯数の推移(妻が64歳以下の世帯) – 内閣府 男女共同参画局
「中学受験は親の受験」と言われるように、塾任せで親が全く関わらないのでは、合格を勝ち取るのは困難です。
だからと言って、「共働き家庭では中学受験は難しい」と諦めてしまうのは賛成できません。現実を受け入れつつ、工夫をすれば中学受験を乗り切ります。
我が家も共働き家庭ですが、2人の子供は第一志望校に合格できました。また、私の勤務校で共働き家庭の生徒はたくさんいます。
共働き家庭の中学受験における3つの課題
共働き家庭では、次のような課題があります。まずは課題を把握するところから始めましょう。
- 時間不足
- 学習管理が困難
- 精神的負担
【課題①】時間不足:勉強を教える、送迎や弁当の準備、情報収集の時間が足りない
仕事や家事で忙しく、シンプルに「時間不足」が問題になります。子供のサポートに費やせる時間が不足すれば、次のような課題が表面化します。
- 子供の勉強を見れない
- 送迎や弁当の準備が大変
- 面談や学校説明会に参加する時間がない
子供の勉強を見られない
「宿題が終わったか?」「間違った問題の解き直しをしたか?」「授業を理解しているか?」など、中学受験においては学習状況の把握が大切ですが、その時間を十分に取れません。
そこはまだまだ小学生です。子供だけに任せてしまうのは、やっぱり不安ですよね。
また、親の帰宅が遅いと、子供が一人で勉強する時間が増えて、ついついダラダラと時間を過ごしてしまいがちです。
送迎や弁当の準備が大変
塾が終わる時間が遅いので、塾まで迎えに行く必要があります。仕事を終えて、家事をして、息つく間もなく迎えに行くのは、やっぱり大変です。
また、遅くまで塾で勉強するので、弁当(いわゆる「塾弁」)が必要です。その「塾弁」の準備が大変です。
そもそも、低学年だと遠くの塾まで一人で行けないかもしれません。そうなると、塾の選択肢自体も限られてしまいます。
塾の面談・志望校の学校説明会などに参加する時間がない
塾の面談や学校説明会などがあります。週末には多くのイベントが入ってくるので、せっかくの休みがなくなってしまいます。
「模試の分析」「志望校の問題傾向」「最新の入試動向」など、志望校選びには多くの情報が必要です。
こうした情報収集のための時間を十分に取れません。ついつい、塾任せになってしまいがちです。
詳しく知る:
【課題②】学習管理が困難:子供の理解度の確認や教材管理の時間が足りない
塾に通うだけでなく、「宿題」「間違った問題の解き直し」「苦手克服」などを継続的にしなければ成績アップは望めません。
そこはまだ小学生なので、子供一人で対応するのは難しく、親の「学習管理」が不可欠です。
次のような課題があります。
- 勉強を教える時間が取れない
- 教材管理がままならない
勉強を教える時間が取れない
中学受験では、ハイレベルな学習をします。塾は集団授業なので、家庭学習で分からない問題を解消しないと、授業が分からないまま進んでしまいます。
週テスト、月例テスト、模試などが多くあり、授業で習った内容から出題されます。子供だけで、計画的にテスト対策をするのは難しいです。
教材管理がままならない
塾では、数多くの教材を使い、大量のプリントが配布されます。
プリントをきちんと管理しないと、効率よく勉強ができません。子供任せにすると教材の管理が不十分になります。
解き直しのために、教材をコピーして解くのですが、そのコピーだけでも大量になります。
こうした教材管理の時間を十分に確保できません。
【課題③】精神的負担:役割分担の不公平感・成績が伸びない不安
「中学受験は親の受験」という言葉があるように、中学受験は子供だけでなく、親にとっても大きな挑戦です。
限られた時間の中で準備を進めるので、「精神的負担」を感じやすくなります。
次のような負担があります。
- 夫婦間での役割分担の不公平感
- 成績の伸び悩みの不安
夫婦間での役割分担
受験のサポートにはやることが多いのですが、夫婦間の役割分担に不公平感を感じることもあります。
特に、夫婦間で受験に対する意識が違うと、「私はこんなに忙しいのに、父親は受験に無関心」と不満を感じることもあるでしょう。
成績の伸び悩みの不安
誰もが順調に成績が伸びるわけではありません。
「子供のサポートが不足しているのではないか?」「他の家庭と比べて勉強を教える時間が少ないのではないか?」などの不安から、焦りを感じることもあるでしょう。
親が忙しいのに、子供がダラダラしていると、ついついイライラするものです。
時には、感情的に言葉をかけて後悔することもあるかもしれません。
共働き家庭の中学受験を成功させる3つのポイント
共働き家庭だと時間的制約が多いですが、次のポイントを工夫すれば、受験を成功に導くことができるはずです。
- 夫婦の役割分担
- 外部の力を活用
- 子供の自立
【ポイント①】夫婦の役割分担:情報の共有やスケジュールの可視化
夫婦で価値観を合わせる
一方だけが全てを抱え込むと、必ず限界がきます。
夫婦で協力するのが大前提ですが、その上で、夫婦で “中学受験で目指す方向性” を擦り合わせましょう。
例えば、父親が「無理して難しい学校に行く必要がない」と思っているのに、母親が「少しでもレベルの高い学校に行かせたい」と思っていると、様々な場面で意見が食い違います。
こうした意見の相違が、受験のサポートを困難にします。
親がどう思うかよりも、何が子供に向いているかを考えましょう。「子供ファースト」の考え方こそ大切です。
スケジュールを可視化する
スケジュールやto doリストを可視化しましょう。
カレンダーを家族の目につくところに貼ってスケジュールを共有します。Googleカレンダーなどで共有してもいいですよね。
ホワイトボードに1週間のto doリストを書き出しましょう。
勉強だけでなく、模試の申し込み、コピー準備など、細々なことまで、することはたくさんあります。
メッセージを書いたりして、コミュニケーションを図るのもいいですね。子供が勉強したことを書き込むのも効果的です。
家族全員で共有することで一体感も高まります。
家族が何をしているかが分かれば、それぞれの大変さを実感できて、不公平感の解消につながります。
夫婦での情報共有を欠かさない
夫婦で、お互いで知り得た情報は共有しましょう。
志望校や勉強のことだけでなく、子供の変化なども積極的に夫婦で話し合いたいですよね。
結果に一喜一憂するだけでなく、プロセスを重視して、子供の変化に注目すれば、受験を通して子供の成長を実感できます。
【ポイント②】外部サポートを活用:家庭教師・ICT・代行サービスなど
外部のサポートを積極的に活用して、効率化できることはどんどん効率化しましょう。
家庭教師・個別指導・映像授業・塾の自習室
親が教える時間を取れないなら、家庭教師や個別指導を活用しましょう。
オンラインで指導を受けることもできるので、費用や移動時間を抑えることもできます。
スタディサプリなどの映像授業も活用できます。親が不在の間の勉強を効率化できます。
また、親が視聴して、子供に教えるのに役立てることもできます。
塾の自習室を活用すれば、家庭での勉強時間をカバーできます。
スマホアプリ・電化製品・送迎バス・宅配弁当など
スマホアプリを使えば勉強を効率化できます。
- studyplus:学習時間を可視化できるアプリ。子供の学習進捗の管理に使用
- Adobe Scan:スマホでプリントをPDFに変換。プリント類はPDFで管理すればスッキリ
- Adobe Acrobat Reader:PDF閲覧アプリ。プリント類、過去問はタブレットで解ける
電化製品で作業を効率化できます。
- 自宅用コピー機:紙で勉強したいなら、コピー機を自宅に用意
- 自動料理鍋・ロボット掃除機など:家事を効率化
その他にも数多くのサービスがあります。
- 塾の送迎バス・送迎タクシー:送迎を代行
- 宅配弁当:塾によっては弁当の宅配サービスあり
このように外部サポートを積極的に活用して、限られた時間を本当に大切なサポートに使いましょう。
【ポイント③】子供の自立:学習内容の絞り込み・簡素化・仕組み化・達成感の積み重ね
いつも親がそばで助けてあげれないからこそ、積極的に子供の自立を促しましょう。
勉強内容を絞る
あれこれ手を広げずに、塾で習ったことを仕上げる方針で勉強します。
こうすることで、塾の課題と間違った問題の解き直しに絞ることができます。
勉強内容を絞れれば、子供だけでも自立的に勉強できます。
親子で、1日の振り返りをして、次の日に勉強することを子供に決めさせるのも効果的です。
自分で決めたことは、最後までやり遂げようとする意思が働くものです。
心理学では「一貫性の原理」と言います。
簡素化・仕組み化する
例えば、プリント管理なら、教科カラー(国語=赤・算数=青・理科=緑・社会=オレンジ)に色分けしたボックス(あるいはファイル)を用意します。
そのボックスに子供が仕分けます。
シンプルに仕組み化すれば、子供だけでも教材管理ができます。
小さな達成感を積み重ねる
受験は合否という結果からは逃れることはできません。
もちろん、合格が大事なのですが、誰もが第一志望校に合格できる訳ではありません。
受験勉強を通して、小さな達成感の積み重ねを大事にしましょう。一つ一つの達成が子供の成長です。
プロセスに目を向ければ、子供の成長を実感できるはずです。
こうすることで、イライラせずに子供と向き合うことができるはずです。
穿った言い方になりますが、学歴だけなら大学受験で取り返せます。
私の経験の中だけでも、中高一貫校で伸びて、第一志望の大学の合格を勝ち取った生徒をたくさん見てきました。
【実例】共働き家庭の我が家の中学受験体験談
我が家の2人の子供は中学受験をしました。
私(=父親)は中高一貫校教師、母親は看護学校教師としてフルタイムで働いています。
典型的な共働き家庭ですが、家族で工夫して、2人とも第一志望校から合格を頂くことができました。
長男の中学受験体験談
長男は小4から通塾を開始。自宅最寄駅の駅前に教室があったので、当初から一人で通っていました。
迎えは私の担当で、その間に、母親は夕食の準備などの家事をこなしていました。
塾のある日は、長男は帰宅後に夕食、入浴、睡眠だったので、母親は夕食の片付けや入浴後の洗濯など、遅くまで家事が残って大変そうでした。
勉強は私が教えました。6年生から、勉強を本格化するのですが、平日はほとんど塾に行っていて、授業のない日は自習室で勉強していました。
実際のところ、日々の宿題のチェックや理解度の確認は不十分で、子供任せになっていたと思います。
間違った問題の解き直しや苦手科目の克服は、時間のある平日や休日に一緒にするので精一杯で、付きっきりで勉強した訳ではありません。
ただし、1日の終わりに必ず、塾で習ったことや勉強で困っていることなどを話をしていました。
毎日、コミュニケーションを図っていたので、ある程度、学習状況が理解できていたのが良かったと思っています。
忙しさを言い訳にせずに、子供の気持ちに寄り添うように接するように心がけました。
長女の中学受験体験談
3才違いの長女は、長男が中学に入学すると同時に入塾。長男の時と同じような関わり方でサポートをしてきました。
長女は、あまり勉強が得意ではありません。自力では塾の宿題もままならない状態で、成績も低迷していました。
本来ならば、しっかり勉強を教えて、立て直す必要があったのでしょうが、そこまで時間のゆとりがなかったというのが正直なところです。
小6から勉強を本格化して、時間を見つけては勉強を教えていました。
こちらは焦るのですが、長女はマイペースの姿勢を崩さないので、イライラして、強く当たったこともあります。(反省をしています)
年内まで志望校の過去問で合格点を取れずに焦りましたが、最後は仕事をセーブしつつ、なんとか間に合わせることができました。
受験が終わっての感想
振り返ってみると、私が勉強、母親が家事と役割分担ができていたのは良かったです。家事も勉強もどちらかが一手に担うと負担は大きくなります。
結局は、「できることしかできなかった」というのが正直なところです。
もっと手をかけていたら、「長男は上位校を目指せた」「長女は最後に苦労しなかった」かもしれませんが、あくまでも結果論です。
志望校を家族で合意できていたのが良かったのかもしれません。
背伸びをせずに子供の実力と性格から志望校を見つけました。
共働きは時間がないのはその通りだけれでも、工夫次第でどうにかなるものです。
家族全員の受験ととらえて、本人だけでなく、両親共に受験をサポートする意識が大切だと痛感しました。