中学受験と高校受験では、母集団が異なるため、偏差値の意味合いが全く違います。両者を比べた時に、中学受験の方が10以上も低く出ると言われます。
人気校を目指すのであれば、中学受験と高校受験の、どちらも大変です。一概にどちらが難しいと決めることは出来ません。
大切なのは、お子さんの適性や家庭の教育方針から、どちらが向いているかを見極めることです。
中高一貫校教師歴30年のベテランライターが、「中学受験と高校受験の偏差値の違い」「適正・教育方針から考えて、どちらを選択すべきか」を解説します。
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中学受験と高校受験の偏差値の違い:母集団が違うため単純比較はできない
首都圏を中心に人気が高まっている中学受験。あまりの過熱感に触れると、「中学受験と高校受験を比べて、どちらが難しいのか?」「偏差値換算するとどうなるのか?」は気になるところです。
難易度の指標となる偏差値は、「母集団の中で自分がどのレベルに位置するか」を示します。
つまり、同じ偏差値50でも、母集団が違えばレベルが違ってくるのです。
中学受験は母集団のレベルが高く、高校受験より偏差値が低くなる
中学受験は一部の小学生しか受験しません。
2024年の首都圏の中学受験では、小学6年生の22.7%が受験しました。おおよそ、小学6年生の5人に1人が受験したことになります。
概して、受験生の学力は高いので、母集団のレベルが高くなります。従って、偏差値は低めに出やすくなります。
一方で、高校受験では、中学3年生のほとんど全員が受験します。
受験生の中には、学力が高くない人が含まれるので、母集団のレベルは中学受験より低くなります。従って、偏差値は高めに出やすくなります。
下の図のように、中学受験と高校受験では母集団が違うので、真ん中を示す偏差値50でも、実際の実力は違うことが理解できると思います。
一般的には、高校受験の偏差値は中学受験の偏差値の+10以上(おおよそ15〜20)と言われています。
つまり、中学受験の偏差値50は、高校受験では偏差値60以上に相当することになります。
実例解説(國學院久我山):中学受験で偏差値50でも、大学入試ではMARCH合格者数405名
「偏差値50の学校なら、中学受験をしてまで行く必要はない」と思う人もいるかも知れませんが、決してそんなことはありません。
ハイレベルな首都圏の中学受験なら、偏差値50の学校でも、実情はかなりのレベルです。高校受験をするとなると、それ相応の難易度になります。
國學院久我山中学高等学校を例に実情を見てみましょう。
- 中学:偏差値50・募集人数190名(2回受験合計)
- 高校:偏差値69・募集人数145名(一般95名・推薦50名)
中学受験では偏差値50ですが、高校受験だと偏差値69になります。かなり難しいのがわかります。
母集団のレベルが変わるだけでなく、募集人数も少なくなるのも、偏差値を押し上げる要因の一つです。
國學院久我山の進学実績を見ると、実にMARCHに405名(現役360名)も合格しています。進学実績も申し分ありません。
中学受験と高校受験「どちらが難しいか?」は決められない。難易度以外の検討ポイントを解説
中学受験と高校受験では母集団が違うので、偏差値の意味合いが違うのは理解できたと思います。
その上で、「どちらが難しいか?」を決めるのは困難です。
結局は、人気校を目指すのであれば、どちらも難しくなります。
両者の偏差値以外の違いを理解して、ご家庭の教育方針やお子さんの適性を見極めて、どちらかを選択することになります。
ここからは、中学受験と高校受験の偏差値以外の違いを解説します。
中学受験と高校受験の出題範囲やレベルの違い
中学受験では高い思考力・表現力・読解力が求められる
中学受験では、小学校で習わない内容からも出題されます。
学校の授業だけでは到底太刀打ちできないので、塾のカリキュラムで対策するのが現実的です。
学校独自の問題が出題されて、高い思考力、表現力、読解力などが求められます。
高校受験は努力が求められる。中学校の評定も大事
高校受験では、基本的には中学校で習う内容から出題されます。
学校で習った内容をしっかりと身につけていくので、どちらかと言えば、才能よりも努力が求められます。
また、中学の評定が非常に大事になるので、授業態度、提出物などを含め、真面目に勉強に取り組む姿勢が求められます。
通塾期間:同程度だが、心理的な負担は中学受験の方が大きい
中学受験は、大手塾では小学4年生から中学受験用のカリキュラムが始まります。
一般的には、新小3春休みに入塾するケースが多く見られます。
中学受験カリキュラムが始まる前から、その準備として入塾するケースもあるので、 中学受験の通塾期間は3年間プラスαが標準的です。
高校受験では、ベネッセ教育研究所 -「第7回 習い事・学習塾について考える その2 学習塾の実態」によると、中学生の通塾率は、
- 中学1年生:約35%
- 中学2年生:約45%
- 中学3年生:約60%
とされています(高校受験が必要な公立中学に絞ると約70%と言われています)。
高校受験の通塾期間は1〜3年間になります。
中学受験では、小学生にも関わらず、夜遅くまで塾で勉強します。通塾のために習い事や趣味を諦める人も少なくありません。
高校受験では、ほとんどの人が通塾しているので、「自分だけ…」といった感情にはならないかもしれません。また、塾と部活を両立している人も少なくありません。
通塾期間だけを捉えれば大差はないのかもしれませんが、心理的な負担は、中学受験の方が大きいと言えそうです。
経済的負担:私立中学の学費がある分、中学受験のほうが負担が大きい
仮に通塾期間がほぼ同じくらいになると、塾の費用に大差はありません。
しかし、私立中学校に進学すると、授業料などがかかり、経済的負担はどうしても大きくなります。
【中高一貫校の学費を解説した記事】
親の関わり:中学受験は親の負担は大きくなりがちだが、親の意向を反映できる
中学受験は、親の積極的な関わりが求められます。
塾の送迎や教材の管理から、勉強を教えるまで、親子で中学受験を乗り越える家庭は少なくありません。
親の負担は決して小さくありませんが、逆に親の意向を反映させやすいと言えます。
高校受験では、中学受験ほど親の関わりは求められません。
逆に、思春期を迎えて親の介入に反発するケースも少なくありません。その点では、親の意向を反映させにくく、親の希望とは違った高校を志望することもあります。
中学受験と高校受験のどちらを選ぶかは、子供の適性や家庭の教育方針で見極めるのがベスト
結局は、難易度よりも「お子さんの適性」や「家庭の教育方針」からルートを見極めるのが大切です。
子供が受験勉強を前向きに捉えていて、ご家庭の方針が確立しているなら、中学受験は良い選択になるでしょう。
逆に、「周りが受験をするから」「とりあえず偏差値の高い学校に」のような、曖昧な気持ちで中学受験に向かうと、「こんなに大変だと思わなかった…」と後悔する結果にもなりかねません。
中学受験を目指す場合は、結果だけでなくプロセスにも目を向けるのが大事
中学受験を目指すなら、お子さんが、まだ小学生なだけに、辛い思いもさせることがあるでしょう。
ましてや、受験なので、当然ですが、思い描いた形にならないこともあります。
だからこそ、結果ではなく、プロセスにも目を向けて欲しいです。
どこの学校に進学することになっても、受験を通じて身につける学力は、必ず大学受験につながっていきます。
また、中高一貫校に行けば、当然ですが、高校受験がありません。その分、中学時代の3年間を有意義に使えます。
大学受験を見据えて先取りカリキュラムを進めたり、お子さんの得意なスポーツなどにも打ち込めます。
何より、教育方針が固まっているのなら、校風に納得できる中高一貫校で6年間を過ごせるのは、非常に魅力的だと個人的には思っています。
投稿者プロフィール


- 中高一貫校指導歴30年のベテラン教師です。勉強が得意な生徒から苦手な生徒までたくさんの生徒を指導してきました。念願叶っての中高一貫校だと思います。充実した6年間を過ごして欲しいものです。ベテランならではの視点で悩みに寄り添ったアドバイスを心がけます。ちなみに2人の子供も中高一貫校に通っています。保護者としての目線も大事にします。