三角方程式、三角不等式、三角関数の最大・最小とは?基本と教え方を解説|高校数学
高校数学における三角方程式・三角不等式の基本は、単位円やグラフを使いながら考えていくことです。高校生に教える際のポイントを、基本公式からやさしく解説します。
解き方のポイント
①Θの範囲を確認する
②単位円やグラフを用いて値や範囲を確定する
なお、次の単元の基本的な解き方については、以下の記事をご覧ください。
・三角関数の基本公式とグラフ
・加法定理・倍角の公式・半角の公式・3倍角の公式
・和積公式・合成
解き方・教え方がわかる事典|中学・高校数学
このページの目次
三角方程式とは
三角方程式とその解
三角方程式とは、三角関数を含む方程式のことです。Θの値を求めます。
sinΘ=k(-1≦k≦1)で、解の一つがΘ=αのとき、Θ=α、πーαとなります。
これは、sinΘ=sin(πーΘ)だからです。なお、一般解は、Θ=α+2nπ、(πーα)+2nπ(nは整数)と表せます。
2πでちょうど円1周分なので、2nπは円n周を表します。円を何周したとしても、結局sinΘの値を決めるのは、αと(πーα)です。
例えば、sinΘ=1/2のとき、Θ=π/6、5/6 πです。一般解は、Θ=π/6+2nπ、5/6 π+2nπ(nは整数)となります。
次に、cosΘ=k(-1≦k≦1)の場合を考えましょう。
解の一つがΘ=αのとき、Θ=α、2πーαとなります。
これは、cosΘ=cos(2πーΘ)だからです。
例えば、cosΘ=1/2のとき、Θ=π/3、5/3 πです。一般解は、Θ=π/3+2nπ、5/3 π+2nπ(nは整数)となります。
では、tanΘ=k(-1≦k≦1)の場合はどうなるでしょうか。
解の一つがΘ=αのとき、Θ=α、α+πとなります。
これは、tanΘ=tan(Θ+π)だからです。
例えば、tanΘ=1のとき、Θ=1/4 π、5/4 πです。一般解は、Θ=1/4 π+nπ(nは整数)となります。
例題
0≦Θ<2πのとき、次の方程式を解け。また、その一般解を求めよ。
①sinΘ=1/2
②cosΘ=ー√3/2
③tanΘ=ー√3
〈解答〉
単位円を書くと考えやすい。
①
(点A・点Bのy座標):(OA・OB):(点A・点Bのx座標)=1:2:√3の三角形をイメージしましょう。
0≦Θ<2πのとき、Θ=π/6、5/6 π。
一般解は、θ=π/6+2nπ、5/6 π+2nπ(nは整数)。
②
3辺が1:2:√3の三角形をイメージしましょう。
0≦Θ<2πのとき、Θ=5/6 π、7/6 π。
一般解は、θ=5/6 π+2nπ、7/6 π+2nπ(nは整数)。
③
3辺が1:2:√3の三角形をイメージしましょう。
点A・点Bのx座標とy座標のうち、片方が正で、もう片方が負であればOKです。
0≦Θ<2πのとき、θ=2/3 π、5/3 π。
一般解は、2/3 π+nπ(nは整数)。
三角不等式とは
三角不等式の解き方
三角不等式は、まず三角方程式として解きましょう。
例えば、0≦Θ<2πで1/2≦sinΘ≦1/√2を解く場合、最初にsinΘ=1/√2、1/2を満たすΘの値を求めます。
θ=π/6・π/4・3/4 π・5/6 π
あとは、三角関数のグラフを用いてΘの値の範囲を求めましょう。
上図において、A(π/6、1/2)、B(π/4、1/√2)、C(3/4 π、1/√2)、D(5/6 π、1/2)です。
1/2≦sinΘ≦1/√2を満たすのは、AB間・CD間なので、
π/6≦Θ≦π/4、3/4 π≦Θ≦5/6 π
例題
0≦Θ<2πのとき、次の不等式を解け。
①cosΘ>ー1/2
②tanΘ≦1
〈解答〉
①
cosΘ=ー1/2のとき、0≦Θ<2πを満たすΘは2/3 π、4/3 π。
上図より、cosΘ>ー1/2を満たすのは、AB間以外だとわかります。
0≦Θ<5/6 π、7/6 π<θ<2π。
②
tanΘ=1のとき、0≦Θ<2πを満たすΘはπ/4、5/4 π。
上図より、A(π/4、1)とB(5/4 π、1)の右側以外であれば条件を満たす。
tanΘは、Θ=π/2、3/2 π のとき、定義されないことに注意しましょう。
0≦Θ≦π/4、π/2<Θ≦5/4 π、3/2 π<Θ<2π。
三角方程式と三角不等式を教えるポイント
三角方程式は単位円をしっかりイメージする
慣れないうちは、単位円を丁寧に書いて考えることが大切です。
また、一般解の2nπは、円をn周するだけだということも伝えてあげてください。
三角不等式は、三角方程式を解いたあとで三角関数のグラフをイメージする
Θの範囲を求めるとき、単位円を使ってもできますが、グラフをイメージする方が確実です。
y=sinΘ・y=cosΘ・y=tanΘのグラフを書いて考えるようにしましょう。
グラフで考えれば、tanΘにおいて、Θ≠π/2+nπであることを見落とすこともなくなります。
三角関数の応用問題に挑戦!
変域が変わる三角方程式・三角不等式
〈問題〉
0≦Θ<2πのとき、次の方程式と不等式を解け。
①2cos(2Θ+π/4)=1
②√2sin(Θ+π/6)>1
〈解答〉
①
0≦Θ<2πより、π/4≦2Θ+π/4<9/4 π
この範囲でcos(2Θ+π/4)=1/2を満たすのは、
2Θ+π/4=π/3、5/3 π
Θ=π/24、17/24 π
②
0≦Θ<2πより、π/6≦Θ+π/6<13/6 π
この範囲でsin(Θ+π/6)>1/√2を満たすのは、
π/4<Θ+π/6<3/4 π
π/12<Θ<7/12 π
sin2Θ+cos2Θ=1を使って解く三角方程式
〈問題〉
0≦Θ<2πのとき、次の方程式を解け。
sin2Θ+3cos2Θ+3cosΘー3=0
〈解答〉
sin2Θ+3cos2Θ+3cosΘー3=0
sin2Θ+cos2Θ+2cos2Θ+3cosΘー3=0
1+2cos2Θ+3cosΘー3=0(∵sin2Θ+cos2Θ=1)
2cos2Θ+3cosΘー2=0
(2cosΘ-1)(cosΘ+2)=0
cosΘ=-2、1/2
0≦Θ<2πのとき、-1≦cosΘ≦1であるから、cosΘ=1/2
Θ=π/3、5/3 π
三角関数の最大・最小
〈問題〉
0≦Θ<2πのとき、y=cos2Θ+cosΘー2の最大値と最小値を求めよ。また、そのときのΘの値を求めよ。
〈解答〉
cosΘ=tとおくと、-1≦t≦1……①
yをtで表すと、
y=t2+t-2
=(t+1/2)2ー9/4
①の範囲において、yの最大値は0(t=1)、yの最小値はー9/4(t=ー1/2)
0≦Θ<2πのとき、t=cosΘ=1となるのは、Θ=0
t=cosΘ=ー1/2となるのは、Θ=2/3 π、4/3 π
よって、Θ=0のとき最大値0
Θ=2/3 π、4/3 πのとき最小値ー9/4
概要が理解できれば問題演習を重ねよう
教えてもらっている状態で問題が解けたとしても、独力でできなければ意味がありません。分かった気になっているだけ、ということもあります。
思考力が問われる数学であっても、反復練習は非常に大事です。簡単な問題から標準レベルの問題まで、段階を踏んで解いていくようにしましょう。
解けた問題には○、解けなかった問題には△や×をつけ、2周目以降では△や×の問題を中心にやり直すようにしてください。
今回解説した範囲は、単位円とグラフを正しく書くことがポイントです。焦らず、時間をかけて基礎の土台をつくりましょう。
オススメの問題集は、『新課程 チャート式 基礎と演習数学I+A』(数研出版)や『新課程 チャート式 基礎からの数学I+A』(数研出版)です。
前者の方が問題は易しめです。
お子さんの理解が進まないパターン3選とその対処法
教えてもなかなか理解してもらえない
根気よく何度も例題レベルの問題を一緒に解いてください。
ヒントを出しながら解いてもらい、徐々にヒントの量を減らすというのも有効です。
三角比の既習範囲が理解できていないというケースもありますので、注意しましょう。
教えるとその場ではできるのに、お子さん一人で問題を解くと間違いが多発
このパターンは、さらに以下の2パターンに大別できます。
①問題演習が足りていない
→問題演習で基礎レベルから順番に解いていきましょう。
②教えられた時は分かった気になっている
→どこでつまずいているのかを分析、理解できていないポイントを再説明しましょう。その後、説明したポイントが理解できているかを測れる問題を演習できるとベストです。
様々なパターンの問題に触れ、とにかく手を動かしてもらいましょう!
教えようとすると、ちょっとした間違いを指摘しただけで機嫌が悪くなり、うまくいかない
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投稿者プロフィール
- 中高一貫校に勤めて10年になる中堅教師。卒業生を3度送り出し、中学生・高校生問わず指導経験が豊富です。自身も中高一貫校出身なので、中高一貫校のことを知り尽くしています。勉強に苦しむ生徒に向き合い、試行錯誤をする日々。そんな教師生活から得られた知見をお伝えし、全国の子供たちの力になれたらと思います。
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