「大学入試は昔の方が難しい」は事実? 今と昔の大学進学率の比較からわかる最新事情
大学進学率は年々あがり、文部科学省の統計によると、2023年(令和5年)度には、大学と短大をあわせ61.1%と、過去最高となっています。
「大学入試は昔の方が難しかった」という言説がありますが、実態としては、少子化で18歳人口が減少し続けているため、大学の定員が足りない状況が解消されつつあり、進学率が上がっていると言えます。
単純に「難易度が上がった」「難易度が下がった」という言い方は、適切ではありません。
このページの目次
過去、大学進学率が低かった理由は「経済的理由」と「大学の収容力」
大学と短大をあわせた進学率は、昭和後期に30%台後半で推移、平成に入ってからは上昇を続け、令和5年度には61.1%と、過去最高を記録しています。
出典:18歳人口と高等教育機関への進学率等の推移 – 令和6年9月10日版 関係データ集 – 文部科学省
「大卒」と言えば一部のエリートのステータスだった過去も
戦前・戦後から振り返れば、大学進学率が低かった理由は、主に経済的理由によるものです。
大学の学費を払える家庭がそれほど多くはなく、大卒と言えば一部の裕福な家庭や、エリートのステータスでした。
18歳人口の減少により、大学が狭き門ではなくなった
戦後の高度経済成長を経て、豊かさが増してくると、次に課題となったのが、大学の収容能力です。
現在でも、大学の収容率と、大学進学率は、正の相関関係にあります(収容率が高い都道府県ほど、進学率が高い傾向)。
出典:収容率と進学率の相関関係 – 令和6年9月10日版 関係データ集 – 文部科学省
近年は、大学の収容力に大きな変化はありませんが、かわりに状況が激変しているのが、18歳人口です。
平成初期には200万人をこえていましたが、令和に入ると110万人程度にまで減少しています。
今後も減り続け、令和23年度には、18歳人口が80万人を切る見込みです。
このため、現在でも大学・短大の収容力は90%をこえており、いずれ定員割れが多発する可能性もあります。
以上の事実から、大学進学率の上昇を理由に、「大学入試は昔の方が難しかった」ということはできません。
単純な難易度の比較は難しい。選択肢が増えた現代ならではの難しさも
学力での入試は50%を切っている
大学進学の難易度をはかる指標としては、「学力」をイメージする方が、おそらく最も多いかと思われます。
しかしながら近年では、主に学力で選抜する「一般入試」は、全体としては50%に満たない割合にまで減少しています。
近年の入試種別の割合は、おおむね次のとおりです。
一般入試(5):学校推薦型選抜(3):総合型選抜(2)
大学側にとっても推薦と総合型選抜を増やすメリットがある
一般入試は今後も減り続け、推薦と総合型選抜の割合がさらに増えるだろう、というのが大勢の見方です。
推薦や総合型選抜では、選抜における学力の影響を下げる(あるいは学力で選抜しない)かわりに、
- 高校時代までにどんなことに取り組んで、どのような成果を上げたか
- 大学に入ってから、どのような学びを志しているか
- キャリアイメージは明確か。またキャリアを実現するために、大学の環境があっているか
といった要素で、選抜を行います(面接、小論文、課題の提出など)。
これは、大学という教育機関の存在意義が、社会で活躍できる人材、社会の課題を解決できる人材の育成にあるため、妥当な流れであると言えます。
「ただ自分の学力で入れる大学に入る」という学生よりも、「この大学ならば、自分のキャリアの実現に有益だから、ぜひ入学したい」という学生のほうが、大学にとっては価値のある人材となるわけです。
「推薦」や「総合型選抜」は、勉強をしなくていいわけではない
受験する生徒側の立場で考えてみると、一般入試が減っている=受験勉強に膨大な時間を費やす、以外の選択肢が豊富となっているのは、一見すると良いことのように思えます。
しかし現実には、そう簡単な話ではありません。
まず、推薦や総合型選抜の場合でも、勉強をしなくてもいいわけではありません。テストを受ける必要がない選抜方式でも、調査書によって高校の成績は見られます。
つまり、高校生活での日々の学習態度が極めて重要であり、ごまかしがききません。
また、推薦や総合型選抜で問われるのは、シンプルに言えば、将来のビジョン(具体的なキャリアイメージ)です。
親世代までは、まだまだ大学に入ってから将来を考えるというケースが少なくありませんでした。
しかし推薦や総合型選抜での大学入試を目指すのであれば、遅くとも中学生(13〜15歳)、早ければ中学受験をする小学校高学年(10歳前後)には、ある程度のキャリアイメージをもっておかなければいけない、ということになります。
そして高校生活は、もう具体的な将来の目標を目指して、そのために今なにをすべきかを見据えて、大学入試で武器になる、学習や校外活動に取り組む必要があるわけです。
選択肢は増えたが、けっして「簡単」ではない
推薦や総合型選抜を「勉強しなくていい」と誤認すると、ずいぶん楽なように思えますが、現実はそうではありません。
ある意味、学力での選抜というのは、公平でもありました。
なぜなら、勉強は筋力トレーニングと一緒で、やるべきことをやりさえすれば、着実に実力が身についていくからです。
もちろん、一人ひとりの個性に違いはありますから、誰しもが同じ勉強量で同じ成果を上げられるわけではありません。
それでも、「勉強は裏切らない」のが本質であり、大学に入りたいければ勉強すればいい、というのは極めてわかりやすくもあります。
選択肢が増えたからこその難しさもある、というのが、近年の大学入試の特徴と言えます。
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