三角関数とは?基本公式とグラフを教え方と合わせて徹底解説|高校数学
高校数学における三角関数の基本は、単位円をベースに考えていくことです。高校生に教える際のポイントを、基本公式からやさしく解説します。
解き方のポイント
①基本公式を覚える
②単位円で考える
③グラフの形を理解する
なお、次の単元の基本的な解き方については、以下の記事をご覧ください。
・三角方程式・三角不等式
・加法定理・倍角の公式・半角の公式・3倍角の公式
・和積公式・合成
解き方・教え方がわかる事典|中学・高校数学
このページの目次
三角比の基本
三角比とは
直角三角形ABCの∠ABC=Θとすると、
sinΘ=AC/AB……Θの正弦
cosΘ=BC/AB……Θの余弦
tanΘ=AC/BC……Θの正接
ー1≦sinΘ≦1、ー1≦cosΘ≦1、tanΘは実数全体
また、基本公式は以下の3つです。
sin2Θ+cos2Θ=1
tanΘ=sinΘ/cosΘ
1+tan2Θ=1/cos2Θ
例題
①sinΘ=2/3のとき、cosΘとtanΘの値を求めよ。
②tanΘ=2のとき、sinΘとcosΘの値を求めよ。
③sinΘーcosΘ=1/2のとき、sinΘcosΘの値を求めよ。
〈解答〉
いずれの問題も、三角関数の基本公式を使って解きます。
①
sin2Θ+cos2Θ=1にsinΘ=2/3を代入すると、
(2/3)2+cos2Θ=1
cos2Θ=5/9
cosΘ=±√5/3
tanΘ=sinΘ/cosΘにsinΘ=2/3・cosΘ=±√5/3を代入すると、
tanΘ=±2√5/5
②
1+tan2Θ=1/cos2ΘにtanΘ=2を代入すると、
1+22=1/cos2Θ
cos2Θ=1/5
cosΘ=±√5/5
sin2Θ+cos2Θ=1にcosΘ=±√5/5を代入すると、
sin2Θ=4/5
sinΘ=±2√5/5
③
sinΘーcosΘ=1/2
(sinΘーcosΘ)2=(1/2)2
sin2Θー2sinΘcosΘ+cos2Θ=1/4
sin2Θ+cos2Θ=1を代入すると、
1ー2sinΘcosΘ=1/4
sinΘcosΘ=3/8
単位円を使って三角関数の性質を押さえる
ーΘの三角関数
sin(ーΘ)=ーsinΘ
cos(ーΘ)=cosΘ
tan(ーΘ)=ーtanΘ
なぜ上記の等式が成り立つのか、単位円を書いて確認してみましょう。
上図において、単位円上の点A・Bはx軸に関して対称であるので、A(X、Y)・B(X、ーY)とおける。
AO=BO=1であるから、
sinΘ=Aのy座標/AO=Y……①
cosΘ=Aのx座標/AO=X……②
tanΘ=Aのy座標/Aのx座標=Y/X……③
sin(ーΘ)=Bのy座標/BO=ーY=ーsinΘ(∵①)
cos(ーΘ)=Bのx座標/BO=X=cosΘ(∵②)
tan(ーΘ)=Bのy座標/Bのx座標=ーY/X=ーtanΘ(∵③)
Θ+π/2(90°)の三角関数
sin(Θ+π/2)=cosΘ
cos(Θ+π/2)=ーsinΘ
tan(Θ+π/2)=ー1/tanΘ
なぜ上記の等式が成り立つのか、単位円を書いて確認してみましょう。
上図のように単位円上に点A・Bをとる。点A(X、Y)とおくと、点B(ーY、X)とおける。
sin(Θ+π/2)=Bのy座標/BO=X=cosΘ(∵②)
cos(Θ+π/2)=Bのx座標/BO=ーY=ーsinΘ(∵①)
tan(Θ+π/2)=Bのy座標/Bのx座標=ーX/Y=ー1/tanΘ(∵③)
Θ+π(180°)の三角関数
sin(Θ+π)=ーsinΘ
cos(Θ+π)=ーcosΘ
tan(Θ+π)=tanΘ
なぜ上記の等式が成り立つのか、単位円を書いて確認してみましょう。
上図のように単位円上に点A・Bをとる。点A(X、Y)とおくと、点B(ーX、ーY)とおける。
sin(Θ+π)=Bのy座標/BO=ーY=ーsinΘ(∵①)
cos(Θ+π)=Bのx座標/BO=ーX=ーcosΘ(∵②)
tan(Θ+π)=Bのy座標/Bのx座標=Y/X=tanΘ(∵③)
例題
①sin7/2 π
②cos(ー4/3 π)
〈解答〉
①2πで単位円を1周して元に戻ることから、
sin7/2 π=sin(3/2 π+2π)=sin3/2 π
=sin(1/2 π+π)=ーsin1/2 π
=-1
②cos(ー4/3 π)=cos4/3 π
=cos(1/3 π+π)=ーcos1/3 π
=ー1/2
三角関数のグラフとは
y=sinΘのグラフ
Θは実数全体をとり、-1≦y≦1です。また、周期は2π(360°)です。
y=cosΘのグラフ
Θは実数全体をとり、-1≦y≦1です。また、周期は2π(360°)です。
sinΘが原点スタートで、cosΘは点(0、1)スタートだと覚えておきましょう。
y=tanΘのグラフ
Θ=ー90°・90°に限りなく近づいていくというイメージです。直線Θ=π/2+kπ(kは整数)が漸近線です。
yはすべての実数をとりますが、Θ≠π/2+kπ(kは整数)となります。なお、周期はπ(180°)です。
グラフの平行移動・拡大・縮小
グラフの平行移動については、一次関数のグラフの考え方と同じです。
y=f(x)のグラフを、x軸方向にp、y軸方向にqだけ平行移動すると、y=f(xーp)+qとなります。
例えば、y=sin(Θーπ/3)のグラフは、y=sinΘのグラフをΘ軸方向にπ/3平行移動したものです。周期は2πのまま変わりません。
グラフの拡大・縮小については、x軸方向とy軸方向の2種類があります。
y=f(x)のグラフをy軸方向にk(k>0)倍すると、y=kf(x)となります。
例えば、y=1/2cosΘのグラフは、y=cosΘのグラフをy軸方向に1/2倍に縮小したものになります。周期は2πのまま変わりません。
y=f(x)のグラフをx軸方向に1/k(k>0)倍すると、y=f(kx)となります。逆数になることに注意しましょう。
例えば、y=sinΘ/2は、y=sinΘのグラフをΘ軸方向に2倍に拡大したものになります。周期は2π÷1/2=4πです。
三角関数の基本とグラフを教えるポイント
基本事項を理解しているかを確認しよう
慣れが勝負です。簡単めの問題を多めに解いて、基本事項を確実に理解しましょう。
また、既習範囲である三角比の確認もしてください。
単位円とグラフを何度も書く!
sin(Θ+π/2)やcos(Θ+π)がsinΘやcosΘとどのように異なるかを直感的に理解するのは簡単ではありません。
単位円をしっかりと書いて考えましょう。
グラフは、Θ軸が0、π/2、π、3/2π、2πあたりが基準です。
平行移動・拡大・縮小のパターンをしっかり理解しましょう!
慣れないうちは、簡単な求値問題であっても、単位円やグラフを書く癖をつけるのがオススメです。
図をきちんと書くよう、お子さんに繰り返し伝えてあげてください。
概要が理解できれば問題演習を重ねよう
教えてもらっている状態で問題が解けたとしても、独力でできなければ意味がありません。分かった気になっているだけ、ということもあります。
思考力が問われる数学であっても、反復練習は非常に大事です。簡単な問題から標準レベルの問題まで、段階を踏んで解いていくようにしましょう。
解けた問題には○、解けなかった問題には△や×をつけ、2周目以降では△や×の問題を中心にやり直すようにしてください。
今回解説した範囲は、三角関数の標準~応用問題を解くために必須の内容です。焦らず、時間をかけて基礎の土台をつくりましょう。
オススメの問題集は、『新課程 チャート式 基礎と演習数学I+A』(数研出版)や『新課程 チャート式 基礎からの数学I+A』(数研出版)です。
前者の方が問題は易しめです。
お子さんの理解が進まないパターン3選とその対処法
教えてもなかなか理解してもらえない
根気よく何度も例題レベルの問題を一緒に解いてください。
ヒントを出しながら解いてもらい、徐々にヒントの量を減らすというのも有効です。
なお、グラフの平行移動・拡大・縮小については、結果を暗記するというやり方でも問題ありません。
教えるとその場ではできるのに、お子さん一人で問題を解くと間違いが多発
このパターンは、さらに以下の2パターンに大別できます。
①問題演習が足りていない
→問題演習で基礎レベルから順番に解いていきましょう。
②教えられた時は分かった気になっている
→どこでつまずいているのかを分析、理解できていないポイントを再説明しましょう。その後、説明したポイントが理解できているかを測れる問題を演習できるとベストです。
単位円やグラフを正しく書けるかどうかがポイントです。
様々なパターンの問題に触れ、とにかく手を動かしてもらいましょう!
教えようとすると、ちょっとした間違いを指摘しただけで機嫌が悪くなり、うまくいかない
思春期で親子関係が難しく、接し方にデリケートな配慮が必要な場合があります。
1つ指摘するときは1つ以上ほめることを意識しましょう。ほめる内容は、学習を着実に進められている点などにするのがオススメです。
そして大事なことは、「根気強く、粘り強く」です。保護者の方が不機嫌になったり、イライラしたりしないように心がけてください。
子どもに教えるというのは、なかなかにストレスが溜まる作業です。保護者の方の息抜きも必要でしょう。根を詰めてやりすぎると、保護者の方もお子さんもしんどくなってしまいます。
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投稿者プロフィール
- 中高一貫校に勤めて10年になる中堅教師。卒業生を3度送り出し、中学生・高校生問わず指導経験が豊富です。自身も中高一貫校出身なので、中高一貫校のことを知り尽くしています。勉強に苦しむ生徒に向き合い、試行錯誤をする日々。そんな教師生活から得られた知見をお伝えし、全国の子供たちの力になれたらと思います。
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