中高一貫校に入れたのに……入学後に落ちこぼれてしまう原因と、親ができるサポート法
「中高一貫校に入学したのに…。」
せっかく合格した中高一貫校。入学後に成績が低迷すると、親としては心配になるものです。
成績低迷はシンプルに「勉強不足」が原因なのでしょうが、事態を深刻にする中高一貫校ならではの事情があります。
この事情を知っておかないと、落ち着いて対処できません。
中高一貫校教師歴30年のベテランライターが、中高一貫校入学後の落ちこぼれを回避するために、親ができる対処法を解説します。
このページの目次
「学力差」がない中高一貫校生の成績低下の大半の原因は「勉強不足」
中高一貫校(私立中学)は入試を突破しなければ入学できませんので、生徒間の学力に大きな差はありません。
それにも関わらず、成績が低迷するのは、厳しい言い方ですが、「勉強不足」と言わざるを得ません。
逆に言うと、お子さんの勉強不足を解消してあげれば、必ず成績が上がります。悲観的になりすぎないで下さいね。
代表的な理由は次の4つです。
- 開放感から楽しいことを優先する
- 勉強の目的意識がない
- 忙しい日々で勉強時間が確保できない
- 思春期で親や先生などに反発する
それぞれ具体的に解説します。
受験が終わった開放感からゲーム・スマホ・部活など楽しいことを優先して勉強しない
中学受験のために、自分のしたいことを我慢していたはずです。まだまだ子供です。開放感に浸るのも仕方がありません。
ましてや、自分の意思とは別に受験勉強を強いられていた人もいるでしょう。
受験が終わった開放感から、一気に欲求が爆発して、自分のやりたいことを優先してしまう。
ゲーム、スマホ、部活、習い事など誘惑は多いですし、こうしたものに熱中して勉強しなくなるケースは珍しくありません。
親としても、「これまで頑張ってきたのだから、少しくらい……」と甘くなってしまうのも理解できますよね。
勉強に対する目的意識が明確でないので勉強しない
大人は将来を見通せますので、いま勉強を頑張れば、将来につながるとわかります。しかし、中学生はそうとは限りません。
中高一貫校に合格すること自体が目的になっていて、合格した先の目標がない人がいるのは事実です。
「勉強しないと怒られる」とか「成績が悪いと恥ずかしい」など、消極的な理由では、勉強は長続きしません。
「何のために勉強するのか」が分からずに、目的意思がないために勉強しなくなるケースがあります。
毎日が忙しくして勉強時間を確保できずに勉強しない
中高一貫校に進学すると、生活が激変します。そこは、地元の公立中学に通うのとは違います。
遠距離通学、7時間授業、部活、などが始まります。
忙しさの影響で、思うように勉強時間が確保できない人がいるかもしれませんね。
加えて、忙しさからくる疲労やストレスで、勉強する気にならない人もいます。
また、宿題や小テストなどが多く、しなければいけない勉強が増えます。不思議なもので、やることが多すぎると逆にやる気を失うものです。
思春期を迎え親や先生に反発してめんどくさいことはしたくないので勉強しない
思春期を迎えるのも、ちょうどこの時期です。
小学生の頃はあれだけ素直だったのに、自立心が大きく育ち、大人の言うことにイライラし、反発します。
それ自体は自然な現象ですが、勉強自体が面倒臭くてやる気にならない人がいるのも事実です。
親に「勉強しろ」と言われると、ますますやる気がでないという悪循環になってしまうケースです。
中高一貫校ならではの成績低迷の5つの原因
ちょっとした環境や心境の変化で、中高一貫校生なら誰でも、勉強しなくなるのは珍しくありません。
さらに、中高一貫校ならでは事情が事態をより深刻にしてしまう可能性があるのです。
次の5つが考えられます。
- 同じような学力なので「学力」よりも「勉強量」で成績が決まる
- 進度が早く難易度が高いので、勉強しないとついていけない
- 上位層と下位層でつるむ傾向があり学力の二極化が進む
- 高校受験がないので勉強するきっかけがない
- 危機感を感じた時には手遅れになる
それぞ具体的に説明していきます。
同じような学力層なので「学力」よりも「学習量」で成績が決まる
中高一貫校は、受験を合格した人が入学するので、基本的には同じような学力の生徒たちばかりです。
学力に大差がないと、やっぱり学習量で成績が決まりますよね。
誤解を恐れずに言うと、公立中学校ではもともとの学力差があります。テストもそこまで難しくありません。
中学受験に合格するくらいのポテンシャルがあれば、それなりの点数を取れるし、下位に低迷することはあまりありません。
授業の進度が早くテストの難易度が高いの勉強不足だと点数が取れない
進学が強みの中高一貫校では先取りカリキュラムを運用しており、高2までで中高6年分の学習を終わらせるペースで進みます。
中学1〜2年で中学3年分の学習をこなすので、中1からハイペースで進みます。
授業はハイペースで進み、授業で演習する時間はとれません。演習は家庭学習でフォローするのがスタンダードです。
家庭学習が不十分だと、演習不足になります。その結果、思いがけない成績低迷を招く可能性があります。
当然、定期テストは範囲が広いだけでなく、大学入試も見据えた発展的内容まで出題されるので、しっかり対策した人とそうでない人とでは点差が開きます。
下位層で固まりがちで成績が悪いことを受け入れてしまう
中高一貫校生は良くも悪くも自分の成績に敏感で、成績で自分の立ち位置の影響を受けてしまいます。
そもそも学校によっては、習熟度別クラス編成をしていて、成績順でクラスが決まるケースさえもあります。
上位陣は上位で、下位陣は下位でつるみがちです。上位陣は競い合うように勉強に取り組むのですが、下位陣は勉強しない自分を受け入れてしまう傾向があります。
言い方は悪いですが、周りの友達も勉強しないので、ぬるま湯状態です。これでは勉強のモチベーションは上がりません。
成績の二極化が進み、ますます差が開く一方です。
高校受験がないので勉強するきっかけがな
高校受験がないので先取りカリキュラムを進めることができるのですが、一方で強制的に勉強するきっかけがないのも事実です。
その意味では、中高一貫校は中だるみしやすい環境であることは否定できません。
「このままではマズイ」と気付いた時には独力では対応できない
中高一貫校生なら勉強の事が心どこかでは気になっているものです。
いよいよ「このままではマズイ」と思った時には、既に独力で対応できないケースが少なくありません。
と言うのも、積み上げ教科の英数を中心に授業内容は先に進み、立て直しが難しくなってしまっています。
周りはハイレベルで、少し頑張ったくらいでは下位から抜け出せません。
このように成績低迷から抜け出せない人たちのことを中高一貫校では「深海魚」と呼びます。
成績が低迷しないために中高一貫校入学前後に親ができるサポート
中高一貫校では入学後に少し勉強の手を抜いただけで、成績が低迷し、立て直しが困難なケースがあるので注意が必要です。
このままでは、自己肯定感が下がり、ますます勉強のモチベーションは湧いてきません。
最悪のケースでは高校に進級できないことも。だからこそ早めに対策が本当に大事です。
「高校受験もないし」「勉強は高校から」とのんびり構えていては手遅れになります。
親としては勉強を見てあげたいかもしれませんが、中高一貫校のハイレベルな勉強を教えるのは容易ではありません。
しかも、小学校の時とは違い、思春期を迎え、子供も親の介入に反発するものです。
そうした状況でも親ができる4つのサポートをここでは紹介します。
- 学習習慣を維持したまま入学式を迎える
- 学習時間を組み込んだスケジュール管理
- 親子のコミュニケーションを増やして目標設定
- 勉強の働きかけは専門家に任せる
具体的に解説します。
学習習慣を維持したまま中高一貫校入学を迎える
中学受験をしたお子さんなら、相当な勉強をしてきたはずです。勉強するのが当たり前の生活を送ってきたに違いありません。
しかし、中学受験が終わった開放感からか、せっかくの学習習慣を失って入学するケースがあるのですが、これが実にもったいないです。
毎日1時間程度でいいから受験後も勉強を継続する。つまり、勉強するのが当たり前の状態で入学式を迎えて欲しいのです。
学習習慣さえ確立しておけば、中高一貫校と言えども、そうそう落ちこぼれることはありません。
学習時間を組み込んだスケジュールを管理する
中高一貫校に入学すると、1日のスケジュールが激変します。地元の公立中学校に通うのとは全く違った生活が待っています。
例えば、遠距離通学、7時間授業、部活、など。その上、宿題や小テストも多く、こなすだけでも精一杯。そんな忙しい日々が待ち構えています。
睡眠時間を削ると疲労が蓄積して、ストレスの原因にもなります。ストレスが大きくなると勉強する気力も萎えるものです。
おすすめは、起床時間・勉強開始時間・就寝時間を固定したスケジュール管理です。
決まった時間になったら、テレビを消して、スマホを預かって勉強始めるのが理想的。睡眠時間を削らずに勉強時間を確保したスケジュール管理をしましょう。
親子のコミュニケーションを増やして目標設定をする
親子のコミュニケーションを増やしましょう。
その上で、「なぜ勉強が必要なのか?」「将来の目標は何なのか?」など、会話の中で勉強の目的意識を持てる働きかけを意識できるといいですよね。
私の中高一貫校での30年の経験からも、「医学部に行きたい」「早慶に行きたい」のように目標が明確な生徒の方が、成績を伸ばしています。
そこまで先を見通せないのなら、「10番以内に入る」など、身近な目標でも良いかもしれませんね。
くれぐれも成績が悪いことを叱りすぎないように。勉強は嫌なものになってはしまったら取り返しがつきません。
具体的な勉強の働きかけは思い切って専門家に任せる
親としては、勉強しない我が子についついイライラしてしまうものです。
期待の裏返しで、ついつい感情的になってしまいますよね。
マズローの理論によると、愛されたい(=所属と愛の欲求)という欲求が満たされなければ、勉強して認められたい(=承認欲求)は持てません。
親が感情的になって叱ると反発を招き、放っておいても勉強しません。良好な親子関係を築くことに注力して、勉強の促しは思い切って専門家に任せてみましょう。
成績低迷の原因は「勉強不足」です。ここを解消してあげると事態は好転するはずです。
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投稿者プロフィール
- 中高一貫校指導歴30年のベテラン教師です。勉強が得意な生徒から苦手な生徒までたくさんの生徒を指導してきました。念願叶っての中高一貫校だと思います。充実した6年間を過ごして欲しいものです。ベテランならではの視点で悩みに寄り添ったアドバイスを心がけます。ちなみに2人の子供も中高一貫校に通っています。保護者としての目線も大事にします。
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