「大学入試の倍率は関係ない」と言われる3つの理由と、本質的な志望大学の選び方
大学入試における倍率とは、定員に対し、願書を提出した人数(あるいは実際に受験した人数)の割合を示します。
倍率が低いほうがライバルが少なく、合格の可能性が上がりそうですが、「併願者が含まれている」「倍率は変動する」「倍率で志望大学を選んでも将来に繋がらない」という3つの理由から、過度に倍率を気にするのはおすすめできません。
ただし、定員が数名など極めて少ない場合は、現実的に勝負になるのか、よく検討をする必要は出てきます。
このページの目次
志願倍率と実質倍率、および計算方法
大学入試における倍率は、「志願倍率」と「実質倍率」に分けられます。
志願倍率:定員に対する、願書を提出した人数の割合
実質倍率:定員に対する、実際に受験した人数の割合
たとえば、定員50名で、200名が受験した場合は、
200 ÷ 50 = 4
実質倍率4倍となります。
競争率を考える上では、実質倍率のほうが正確な指標となりますが、実質倍率は受験後でないと判明しないため、参考にできるのは前年までのデータとなります。
大学入試で倍率は関係ないと言われる3つの理由
併願者が含まれている
大学受験では、複数の大学を受験し、合格できた大学のうち、希望に最も近い大学に入学する「併願」が一般的です。
特に私立大学は、日程が重ならない限り、受験する校数に制限はありません。国公立大学でも、前期・中期・後期の各日程で出願が可能です。
倍率が高かったとしても、合格者のうちで、実際に入学を選ぶのは一部です。
また、人気のある著名大学や難関大学の場合、ダメ元の記念受験というケースもあります。学力水準が、大学が求める水準に届いてない受験者が、倍率を押し上げている可能性があります。
倍率は変動する
前年の倍率があまりに高かった場合、受験者が敬遠して、翌年の倍率が下がる「隔年現象」が見られるケースがあります。
逆に、前年の倍率が相対的に低く見える場合に、翌年の倍率が高くなる可能性もあります。
誰かが考えることは、その他の多数も考えているということです。数字に踊らされないように注意しましょう。
倍率で志望大学を選んでも将来に繋がらない
志望大学選びで最も重要なのは、将来のキャリアイメージから逆算して、自分に合った(あるいは自分に必要な成長ができる)大学を選ぶということです。
倍率を過度に気にして、「自分の学力で合格できそうな大学のどれかに入れればいい」というやり方では、大学での貴重な数年間が、卒業後の将来にダイレクトに繋がっていきません。
また、将来にこういうキャリアを歩みたいから、どうしてもこの大学に入るんだ、という目的意識がなければ、困難が多い受験勉強も捗りません。本来の実力を発揮することは難しいでしょう。
もう一つの視点では、近年増加の傾向を見せている総合型選抜では、大学が求める人物像(アドミッション・ポリシー)との一致が重要になります。
これは、大学の存在意義が、社会の課題解決ができる人材の育成にあるからです。
キャリアイメージが明確であり、目的意識のある生徒を受験で評価する傾向が強まっているという観点からも、倍率を気にしすぎるのは、百害あって一利なしということになります。
「倍率」よりも「合格最低点」が重要
大学によっては、合格最低点を公表している場合があります。
倍率よりも、極めて現実的に、合格の可能性を検討できる指標となります。
合格最低点がわかる大学の場合は、過去問を解いて、合格最低点を上回れるかどうか、あるいは足りなかったとしても、受験当日までの対策でリカバリーが間に合いそうかを判断できます。
明らかに自分の学力との間に、大きな隔たりがある場合は、見送るべきということになりますし、努力次第で届きそうであれば、チャレンジする価値があると考えられます。
定員が極端に少なければ、倍率を参考にすべきときもある
特に総合型選抜で顕著ですが、募集定員が数名のみなど、極端に少ない場合があります。
たとえば、5人しか合格者を出さず、合格できるのが50人に1人といった状況であれば、さすがに極めて狭き門と言え、何も考えずに受験するのは得策とは言えません。
総合型選抜であれば、見極めるべきは、大学が求める人物像(アドミッション・ポリシー)との一致、および他の志願者との競争で優位に立てる実績があるかどうかです。
ユニークな例として、福井県立大学に2025年度より新設される恐竜学部のケースを紹介します。
初年度の総合型選抜の定員は6名。このわずかな人数を、出願書類および5分程度のプレゼンテーション+面接で選抜します。
「子どもの頃、恐竜が好きだった」程度の材料では、合格は不可能でしょう。
しかし、中学・高校と運営してきた「恐竜の研究ブログ」でジャンル随一のアクセスを集め、最新の海外研究までフォローしている、という生徒であれば、かなり優位に立てるだろうと推測できます。
以上のように、アドミッション・ポリシーや、選抜内容を元に、合格可能性を検討し、ほとんど不可能に思える場合は、同ジャンルの別の大学を探すなど、別の道を模索するのも、立派な選択肢です。
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