三角関数の和と積の公式・合成とは?教え方と合わせて徹底解説|高校数学
三角関数の和積公式・合成を高校生に教える際のポイントは、公式の作り方をきちんと押さえることです。
解き方のポイント
①加法定理から和積公式・合成の公式を作ってみる
②例題を解いて運用する
なお、次の単元の基本的な解き方と教え方については、以下の記事をご覧ください。
・三角関数の基本公式とグラフ
・三角方程式、三角不等式
・加法定理、2倍角の公式、半角の公式、3倍角の公式
解き方・教え方がわかる事典|中学・高校数学
このページの目次
和積公式の基本
和積公式とは
積→和の公式
sin α・cos β=1/2{sin(α+β)+sin(αーβ)}
cos α・sin β=1/2{sin(α+β)ーsin(αーβ)}
cos α・cos β=1/2{cos(α+β)+cos(αーβ)}
sin α・sin β=ー1/2{cos(α+β)ーcos(αーβ)}
和→積の公式
sinA+sinB=2sin(A+B)/2・cos(AーB)/2
sinAーsinB=2cos(A+B)/2・sin(AーB)/2
cosA+cosB=2cos(A+B)/2・cos(AーB)/2
cosAーcosB=ー2sin(A+B)/2・sin(AーB)/2
積→和の公式は、加法定理を用いて作る
加法定理sin(α±β)=sin α・cos β±cos α・sin β
cos(α±β)=cos α・cos β∓sin α・sin β
に、sin α・cos β、cos α・sin β、cos α・cos β、sin α・sin βがそれぞれ含まれていることを利用します!
sin(α+β)=sin α・cos β+cos α・sin β……①
sin(αーβ)=sin α・cos βーcos α・sin β……②
sin α・cos β
①+②をすれば、cos α・sin βが消え、右辺がsin α・cos βだけになります。
sin(α+β)+sin(αーβ)=2sin α・cos β
sin α・cos β=1/2{sin(α+β)+sin(αーβ)}
cos α・sin β
①ー②をすれば、sin α・cos βが消え、右辺がcos α・sin βだけになります。
sin(α+β)ーsin(αーβ)=2cos α・sin β
cos α・sin β=1/2{sin(α+β)ーsin(αーβ)}
残り二つも同様に考えましょう。
cos(α+β)=cos α・cos βーsin α・sin β……③
cos(αーβ)=cos α・cos β+sin α・sin β……④
cos α・cos β
③+④より、cos(α+β)+cos(αーβ)=2cos α・cos β
cos α・cos β=1/2{cos(α+β)+cos(αーβ)}
sin α・sin β
③ー④より、cos(α+β)ーcos(αーβ)=ー2sin α・sin β
sin α・sin β=ー1/2{cos(α+β)ーcos(αーβ)}
和→積の公式は、積→和の公式を用いて作る
積→和の公式の右辺が和の形になっていることに注目し、α+βとαーβを一字に置き換え、見やすくします。
α+β=A……⑤
αーβ=B……⑥
とおきましょう。
あとは、積→和の公式の左辺にあるα、βをA、Bで表せば完成です。
⑤+⑥より、2α=A+Bなので、α=(A+B)/2
⑤ー⑥より、2β=AーBなので、β=(AーB)/2
これを積→和の公式に代入すれば、和→積の公式となります。
sin α・cos β=1/2{sin(α+β)+sin(αーβ)}に代入する場合は、以下のようになります。
sin(A+B)/2・cos(AーB)/2=1/2(sinA+sinB)
両辺を2倍して
sinA+sinB=2sin(A+B)/2・cos(AーB)/2
例題
次の値を求めよ。
①cos75°・sin15°
②sin75°ーsin15°
〈解答〉
①積→和の公式より、
cos75°・sin15°
=1/2{sin(75°+15°)-sin(75°ー15°)}
=1/2{sin90°ーsin60°}
=1/2(1ー√3/2)
=(2ー√3)/4
②和→積の公式より、
sin75°ーsin15°
=2cos(75°+15°)/2・sin(75°ー15°)/2
=2cos45°・sin30°
=2・1/√2・1/2
=√2/2
合成の公式
合成の公式とは
a sinΘ+b cosΘ=√(a2+b2)・sin(Θ+α)
ただし、sin α=b/√(a2+b2)、cos α=a/√(a2+b2)
合成の公式は、加法定理を用いて作る
下図のように、原点がOのxy座標上に点X(a、b)をとり、線分OXがx軸の正の向きとなす角をαとします。
三平方の定理より、OX=√(a2+b2)
また、
sin α=b/√(a2+b2)
cos α=a/√(a2+b2)
a=√(a2+b2)・cos α
b=√(a2+b2)・sin α
よって、
a sinΘ+b cosΘ
=√(a2+b2)・cos α・sinΘ+√(a2+b2)・sin α・cosΘ
=√(a2+b2)(cos α・sinΘ+sin α・cosΘ)
=√(a2+b2)sin(Θ+α)(∵加法定理)
例題
次の三角関数を合成し、k sin(Θ+α)の形に直せ。ただし、k>0、ーπ≦α≦πとする。
①sinΘー√3cosΘ
②3sinΘ+2cosΘ
〈解答〉
①αが具体的な値をとるパターン
原点をOとするxy座標に点X(1、ー√3)をとる。
OX=√{12+(ー√3)2}
=2
辺の長さの比が1:2:√3の三角形なので、線分OXがx軸の正の向きとなす角はーπ/3
よって、sinΘー√3cosΘ=2sin(Θーπ/3)
②αが具体的な値ではないパターン
原点をOとするxy座標に点X(3、2)をとる。
OX=√(32+22)
=√13
辺の長さの比が2:3:√13の三角形なので、αが具体的に定まらない。
この場合は、線分OXがx軸の正の向きとなす角をαとおき、
sin α=2/√13、cos α=3/√13
よって答えは、
3sinΘ+2cosΘ=√13sin(Θ+α)
ただし、sin α=2/√13、cos α=3/√13
お子さんに教える際のポイント
以下のポイントを伝えてあげてください。
①積→和の公式の作り方については、積→和の公式の左辺が加法定理の右辺の一部であることを利用する
②和→積の公式は、積→和の公式を利用して作る
③合成の公式は、xy座標上の点をΘで表すイメージをもつ
概要が理解できれば問題演習を重ねよう
教えてもらっている状態で問題が解けたとしても、独力でできなければ意味がありません。分かった気になっているだけ、ということもあります。
思考力が問われる数学であっても、反復練習は非常に大事です。簡単な問題から標準レベルの問題まで、段階を踏んで解いていくようにしましょう。
解けた問題には○、解けなかった問題には△や×をつけ、2周目以降では△や×の問題を中心にやり直すようにしてください。
今回解説した公式は、いずれも抜け落ちてしまいやすいものばかりです。繰り返し自分で公式を導くようにしましょう。
オススメの問題集は、『新課程 チャート式 基礎と演習数学I+A』(数研出版)や『新課程 チャート式 基礎からの数学I+A』(数研出版)です。
前者の方が問題は易しめです。
お子さんの理解が進まないパターン3選とその対処法
教えてもなかなか理解してもらえない
根気よく何度も例題レベルの問題を一緒に解いてください。
ヒントを出しながら解いてもらい、徐々にヒントの量を減らすというのも有効です。
単位円では表しにくい問題が増え、式の変形が中心となってイメージがしづらくなっています。式変形の意味を逐一理解することがポイントです。
教えるとその場ではできるのに、お子さん一人で問題を解くと間違いが多発
このパターンは、さらに以下の2パターンに大別できます。
①問題演習が足りていない
→問題演習で基礎レベルから順番に解いていきましょう。
②教えられた時は分かった気になっている
→どこでつまずいているのかを分析、理解できていないポイントを再説明しましょう。その後、説明したポイントが理解できているかを測れる問題を演習できるとベストです。
様々なパターンの問題に触れ、とにかく手を動かしてもらいましょう!
教えようとすると、ちょっとした間違いを指摘しただけで機嫌が悪くなり、うまくいかない
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投稿者プロフィール
- 中高一貫校に勤めて10年になる中堅教師。卒業生を3度送り出し、中学生・高校生問わず指導経験が豊富です。自身も中高一貫校出身なので、中高一貫校のことを知り尽くしています。勉強に苦しむ生徒に向き合い、試行錯誤をする日々。そんな教師生活から得られた知見をお伝えし、全国の子供たちの力になれたらと思います。
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