偏差値の低い私立中学に行く価値は?「難関校のみ受験して不合格なら公立中」の是非

勉強する小学生

中学受験を目指すご家庭にとって、志望校に落ちた場合、偏差値の低い中学でも行くべきかは、悩ましい問題です。

中学受験は、母集団がハイレベルで、偏差値は低くなりがちです。実際に、偏差値40台の中高一貫校でも、高校から入学するのは難しく、進学実績も申し分ない学校はたくさんあります。

偏差値だけで判断せず、お子さんに合った学校かを見極めましょう。

その上で、偏差値の低い私立中に行く価値があるか?」「難関校だけを受けて落ちたら公立中でいいのか?」について、中高一貫校教師歴30年で2人の子供も中学受験をしたライターが解説します。

中学受験では「偏差値が低い=教育レベルが低い」ではない

中学受験は母集団のレベルが高く、相対的に偏差値は低めに出る

首都圏模試センターの調べによると、2025年首都圏中学入試では、受験者総数が52,300人、受験率が18.10%となっています。

おおよそ小学6年生の5人に1人が受験をすることになります。誰もが受験する訳ではないので、中学3年生のほぼ全員が受ける高校受験よりも、受験生のレベルが高くなる傾向があります。

偏差値は、母集団で、自分がどのレベルにいるかを示す指標で、母集団のレベルが高ければ偏差値は低めに出ます。

一般的には、中学受験の偏差値は高校受験と比べて10以上(実際には15〜20程度)低くなると言われています。

下の図が示すように、同じ偏差値50でも中学受験と高校受験では、実際の学力が違うのを抑えておきましょう。

中学受験の偏差値50以下の中高一貫校も大学進学実績は申し分ない

偏差値50以下の中高一貫校でも大学合格実績は申し分なく、高校からの入学は決して簡単ではありません。

以下がその一例です。(中学受験偏差値・大学合格実績)

偏差値の見方に関しては、こちらの記事で詳しく解説しています。

偏差値だけでは判断できない私立中学(中高一貫校)の優位性|4つのポイント

大学合格実績が充実しているのは、中高一貫校には優位性があるからと言えます。

ここからは、偏差値だけでは測れない中高一貫校の魅力を紹介します。

1. 先取りカリキュラムや独自カリキュラムで6年間を有効に学びに活用できる

先取りカリキュラムは難関大学受験に有利

進学校タイプの中高一貫校は、先取りカリキュラムを採用しており、高2を目処に中高6年分の学習内容が終了します。

高校受験がないから可能なシステムで、高3の1年間を入試演習に充てられるので、大学受験では確実に有利です。

実際に、難関大学の合格実績は、中高一貫校が上位を占めています。

中高一貫校の先取りカリキュラムに関しては、こちらの記事で詳しく解説しています。

英語の先取りは私文の大学受験に有利

東大・京大・医学部などの難関大を目指すなら、中高一貫校が有利ですが、我が子にそこまで望んでいない家庭もあるかと思います。

そのようなケースでも、英語だけでも先取りすれば、早慶上理・GMARCH・関関同立など、とりわけ私文型の受験で有利です。

こうした大学は英語の難易度が高く配点も大きいので、英語が合否に重要になる傾向があるからです。

中高一貫校の中学は、公立中よりも、1.5倍程度授業時間数が多く中高一貫校用テキストで先取りします。標準レベルでも、中3で英検準2級に合格する実力をつけることができます。

中高一貫校の中学英語に関しては、こちらの記事で詳しく解説しています。

独自カリキュラムで生徒の個性を伸ばし、総合型選抜での大学進学に有利

先取りカリキュラムの代わりに、学校独自カリキュラムを採用している学校も少なくありません。

自ら問いを立てて学びを深める探求学習、英語重視や留学制度などのグローバル教育など、特徴的なカリキュラムです。

大学入試制度改革によって、学力試験以外の入試方式が増えています。

実際に、約50%(2人に1人)の生徒が学校推薦型選抜・総合型選抜などで大学に進学しています。こうした傾向に的確に対応したカリキュラムも魅力です。

2. 価値観を共有し競い合える同級生と、意欲的な教師陣

価値観を共有して競い合える同級生

中高一貫校は、校風に納得して入学するので、同級生と価値観を共有できます。また、学力試験をパスしているので、学力レベルが似ていて競い合う環境があります。

多感なこの時期は、友達から受ける影響は小さくありません。同じメンバーで6年間を過ごすので、絆も深まり、卒業後も付き合える一生涯の友達に出会えるでしょう。

この学校を良くしたいと思う意欲的な教師陣

中高一貫校は、教師の転勤がないので、腰を据えた指導ができます。

教師も学校に愛着を持っていて、「この学校を良くしたい」という思いが大きいです。

中高一貫校だと、生徒間の学力の差がないので、的を絞った指導ができます。

教師もノウハウを共有しているので的確な指導が可能なのです。

3. 充実した設備・学校行事・推薦制度

充実した設備や魅力的な学校行事

中高一貫校は、ダイレクトに設備投資ができるので、設備面も充実しています。

人工芝グラウンド、冷暖房完備のアリーナ、開放的な食堂など、快適な学習環境が整備されています。

また、体育祭、文化祭、修学旅行なども工夫されていて、魅力的な部活もあります。

充実した指定校推薦枠

大学付属の中高一貫校なら、エスカレーター方式で大学まで進級できます。進学実績の良い中高一貫校は指定校推薦枠が充実しています。

こうした制度を活用すれば、中学受験が終われば、受験せずに大学に進学することができます。

ゆとりを持って合格すれば、上位の成績を維持しやすくなります。結果的に、評定が高くなり、推薦入試を有利に進めることもできるのです。

4. 高校受験がないからこそ、時間を有意義に使える

高校受験がないので、6年間をシームレスに使えます。

大学受験を見据えた勉強、大好きな部活に熱中、海外短期留学など個性に合わせた体験など、時間を有意義に使えます。

中高一貫校は、大学進学を見据えて入学した生徒ばかりです。学校も将来を見据えた指導をします。

タイミングがくれば、生徒同士で競い合うように勉強を始める環境があるのです。

公立中学を選んだ場合に考えておきたい、公立中学の3つの特徴

1. 基礎学力重視のカリキュラム

公立中では、学習指導要領に沿ったカリキュラムで学習します。義務教育という観点からも、基礎学力を重視した内容です。

また、生徒間の学力幅が大きく、勉強が苦手な生徒に合わせて、授業内容が下ブレしがちです。

2. 様々なレイヤーの同級生と、転勤を伴う教師陣

公立中は入試がないので、様々なレイヤーの同級生がいます。相容れない価値観に遭遇することもあるかもしれません。

いじめなどの重大な生徒指導案件が発生した場合でも、私立中なら加害生徒の転校を促せますが、公立中ではそのような対応ができません。

先生も転勤があります。目の前の生徒を伸ばしたいと情熱を持って指導しますが、3年〜5年の短いスパンで教育的成果を出すのは難しい側面もあります。

校長先生も変わるので、学校の方針が転換することもあります。

3. 内申点重視の高校受験

高校受験は、内申点重視です。授業態度や提出物などを真面目に取り組む態度が求められます。

思春期ならではの反抗期とも重なり、親の意向を反映させにくい側面もあります。

学力だけの中学受験とは違い、高校受験は過熱感はないにしても、不確定要素があるのは否定できません。

中1から通塾すると、3年間通塾することになります。「公立中+塾」は、「私立中+塾なし」と費用面の大きな違いがありません

公立中と私立中の違いに関しては、こちらの記事で解説しています。

もちろん、メリットとデメリットは表裏一体です。

幅広いレイヤーの生徒がいることで多様な価値観に触れれますし、教師の転勤があることで組織の新陳代謝が進みます。

要は、そもそも私立中とは全く異なる公立中に納得できるかどうかがポイントです。

「難関校に不合格なら公立中学へ進学」で本当に良い? 必ず検討しておきたいポイント

「難関校に落ちたら公立中でいいのでは?」と悩まれているご家庭もあるかもしれません。

各家庭の教育方針によるので、「何が正解か不正解か?」は決められません。

私は中高一貫校教師で、子供も中学受験をしました。両者の目線からの個人的見解を紹介しますので、参考にしてください。

中学受験を失敗で終わらせないため幅広く受験する

子供に失敗したという感覚を抱かせないのが重要

そもそも親の意向で始めた中学受験を、「失敗で終わった」と感じさせては子供が可哀想です。そうさせないことが重要です。

第一志望校でなくても、必ずどこかの学校の合格を勝ち取るべきです。

「全部落ちた」という劣等感を抱かせてはいけません。

どこの学校であっても、子供にとってはシンプルに合格は嬉しいものです。

「全部落ちた」「〇〇以下の学校は受けさせない」などは絶対にNGです。

幅広いレベルの受験と慎重な受験校選び

偏差値に捉われずに多くの学校を検討しましょう。

「我が子がこの学校に通うことになったら」という視点で、できるだけ多くの学校に足を運んで、雰囲気に触れておくのがおすすめです。

  • チャレンジ校:偏差値+5〜10
  • 志望校:偏差値相応(合否判定50%〜80%)
  • 安全校:偏差値-5以上(合否判定80%以上)

中学受験では、上記が目安ですが、安全校をしっかり受験日程に組み込むことが重要です。

進学先として私立中を選択した方が良いパターン:子どもが望んでいる、など

中学受験を決意したからには、私立中に進学する前提で準備を進めるべきだと考えています。

まずは、子供が望めば、どこの私立中でも認めてあげてください。

子供が納得しないまま公立中に進み、中1から高校受験のための通塾が始まると、「振り出しに戻った」という気持ちになってしまいます。

だからこそ、学校選びが大事です。

  • 授業時間数が多いので、基礎から丁寧に学び直せる
  • 管理型の校風で、丁寧に面倒を見てくれる
  • 独自カリキュラムが子供に合っていて、得意を伸ばせそう

「偏差値」という先入観を持たなければ、きっと見つかるはずです。

子供が進学しても納得できる志望校を見つけておくことで、子供が望まない公立中進学を回避できます。

中学受験のために費やした時間やエネルギーはやっぱり尊いです。

どんな結果になっても、子供の気持ちは尊重してあげましょう。

進学先として公立中を選択した方が良いパターン:子どもが高校受験に前向き、納得でいる私立中がない、など

子供が「高校受験で上を目指したい」と前向きな気持ちを持っている

合格を勝ち取った上で、公立中を選択してもよいパターンもあります。

子供が、「高校受験で上を目指したい」と前向きな気持ちを持っているケースです。

学力が高かったり、勉強が好きな児童は、これに当てはまるかもしれません。

高校受験に対しても前向きな気持ちを持っていれば、公立中を検討しましょう。

通学圏内に校風に納得できる学校がない

また、通学圏内、あるいは負担が大きくない圏内に、校風が合う学校がなければ、子供が納得できるのであれば公立中を検討しましょう。

特に地方在住で、私立中の選択肢が限られている場合は、早い段階から、公立中も選択肢に含めておくのは現実的です。

公立を選ぶにしても、合格を勝ち取ることが心の支えになる

親子で公立中に行くことに納得していても、合格を勝ち取って欲しいです。

公立中に進めば、「私立に落ちたんだろう」とデリカシーのない発言も十分にあり得ます。

そこは子供社会なので仕方がありません。それでも、合格を勝ち取っておくと、心の支えになりますよね。

最後に、偏差値の低い学校でも、そこを第一志望にしている受験生がいるので、くれぐれも甘く見てはいけません。

どんな学校でも、合格を勝ち取るために、最後の最後まで粘り強く勉強すれば、実力が伸びます。「どうせ落ちるし…」という気持ちで勉強していたら、力は伸びないものです。

投稿者プロフィール

ひろ先生
ひろ先生
中高一貫校指導歴30年のベテラン教師です。勉強が得意な生徒から苦手な生徒までたくさんの生徒を指導してきました。念願叶っての中高一貫校だと思います。充実した6年間を過ごして欲しいものです。ベテランならではの視点で悩みに寄り添ったアドバイスを心がけます。ちなみに2人の子供も中高一貫校に通っています。保護者としての目線も大事にします。

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