中学受験を目指すお子さんが、勉強のやる気がない。6年生にもなって、「勉強嫌だ…」「塾行かない…」などと言われると、どう対応すればいいのか悩みます。
親としても、必死にサポートしているはずです。
怒らないように、励ますように、と分かっていても、反抗的な態度を取られると、ついつい、イラッとしてしまうものです。
挙句には、しなくてもいい親子ケンカにまで発展。
実はお子さんのやる気で多くの受験生の親は悩んでいます。
現役の中高一貫校の教師で、2人の子供も中学受験をさせたライターが、自身の経験を踏まえて、子供がやる気にならない5つの原因と親ができる対処法を解説します。
このページの目次
勉強のやる気がない原因①「シンプルに勉強がわからない」
目の前にある問題が分からないから勉強ができない
中学受験の入試問題は、小学校では習わないことが出題されるので、塾で習う内容は非常に高度です。
目の前の問題が解けないので勉強できない。その結果、やる気がなくなるのはよくある現象です。
「どこが分からないのかも分からない」「分からない理由を言葉で説明できない」「どうしたら分かるようになるのかも分からない」
このようなシンプルな理由で、勉強のやる気がでないのです。
「やる気がない」と精神論に原因を求めずに、分からない問題を解消する必要があります。
放っておいても分かるようにはならないので、大人のサポートが必須
小学生だと、分からない問題を自分で調べて理解するのは難しいです。それは仕方ありません。
大人がわかりやすく説明して理解をさせます。その上で、類題を使って、自力で解けるかを確認して下さい。
親が教えると、子供が甘えたり、反抗したりすることもあります。そこで、親が感情的になってはいけません。
また、大人ですら理解するのに苦労する問題もあります。
このようなケースでは、家庭教師や個別指導など、プロの力を借りるのが有効です。
塾の内容と違うことを教えると、子供の負担が増えてしまいます。塾の勉強をサポートする形がベストです。
偏差値40台前半の中高一貫校に進学した、私の長女の体験談を紹介します。 新小4の春休みから通塾を開始しましたが、当初から、やる気は低空飛行でした。 兄の中学受験を間近で見ていたので、どれだけ勉強しないといけないかは分かっていたはずです。にもかかわらず、終始やる気がなく、塾のテストも散々でした。 私が休みの日には、そばについて一緒に勉強したものです。集中がすぐに途切れてしまうので、何度も何度も励ましの声かけをしたのを覚えています。 直前期には、二人で過去問をやり込みましたが、この時期になってもダラダラするので、娘を厳しく叱責したこともあります。 恥ずかしい話ですが、何度か泣かすまで叱りつけたこともありました。 結局は、娘の場合は、そばについて教えてあげないと勉強できなかったのだと思います。それでも、分からない問題が解けるようになると、嬉しそうにしたものです。 娘にあった学校を見つけて、偏差値的にも高望みしなかったので、なんとか無事に合格をいただけました。 実力相応の学校なので、勉強に追われることなく楽しく通学しています。系列大学の看護学部に進学して、母親と同じ看護師の道を目指しているようです。 親子でぶつかり合うこともありましたが、あきらめないで良かったと思っています。娘の場合は、勉強が分からなかったのが、勉強のやる気が出ない最大の原因でした。 多少強引でも、親が引っ張っていかないと、合格は勝ち取れなかったかもしれません。
勉強のやる気がない原因②「レベルや分量が合っていないのであきらめている」
勉強のレベルや分量が合っていないからやる気になれない
ほとんどの中学受験塾は、同じテキストを使って集団授業を進めます。一人ひとりのレベルに応じているわけではないので、分からない人にとっては授業が理解できないまま進んでいきます。
ようやく授業が終わって、夜遅くに帰宅しても、大量の宿題が待っています。ホッとする間もなく、宿題に取り掛からないと、最後まで終わりません。
私たち大人でさえも、仕事が終わって帰宅したのに、持ち帰りの仕事があると幻滅しますよね。
もちろん、難なくこなせるハイレベルな受験生もいますが、誰もができるわけではありません。
レベルが合っていなかったり、分量が多すぎると気が滅入って、勉強のやる気がなくなります。これがいつまで続くのかと、子供なりに不安になるものです。
親のサポートだけでこなせないなら塾の先生にしっかり相談を
教材の管理やコピー、暗記用のまとめプリント作成、テスト範囲のチェック、などなど。親も協力して勉強を効率化していることと思います。
それでも子供がカバーできない場合は、ある程度、受け入れるしかありません。
全てをこなすのに無理があれば、子供の学力や重要度などから、分量やレベルを調整してあげましょう。
時間が限られている中で、いかに効率よく点数アップに繋げるかも実力のひとつです。
また、子供に合った分量やレベルに調整して、こなせたら努力を認める。結果も大事ですが、プロセスに目を向けて、子供の努力を認めてあげましょう。
それでも子供がこなせずにあきらめ気味なら、遠慮なく塾の先生に相談して下さい。
勉強のやる気がない原因③「受験が『自分事』になっていないから頑張れない」
志望校(=憧れの学校)がないと頑張れない
小学生では、「大学受験のために、今勉強を頑張る」のように、先を見通すことはできません。
大人なら「今頑張れば、あとで必ず役立つ」のがわかりますが、子供にとっては今は今でしかないのです。
それでも、憧れの学校が見つかれば、勉強にもやる気が出るものです。
ただし、親目線の志望校(例えば、進学実績が良い)が、必ずしも子供には響かないこともあります。
親の顔色を伺って志望校にしているだけかもしれません。これでは頑張れませんよね。
子供に合った学校を見つけて機会をとらえて学校に足を運ぶ
オープンスクール、文化祭、体育祭など実際に学校に足を運んでいると思いますが、偏差値や進学実績など親目線で学校を選んでいませんか?
親の希望の学校から、憧れの学校が見つかるかもしれませんが、子供の興味、嗜好、適性などから学校選びをするのも大事です。
例えば、子供がサッカーが好きなら、サッカー部の強い学校や人工芝のグラウンドがある学校など、子供が憧れる学校を勧めてみましょう。
在校生のイキイキしている姿に触れさせるのも有効です。学校への憧れが受験勉強の原動力になります。
目標をスモールステップにして達成感を持たせるのも効果的
「次の模試で偏差値〇〇」「算数の〇〇を理解する」など、身近で到達可能な目標を設定するのも効果的です。
目標は、子供の学力に合わせて、達成可能なものに調整しましょう。大事なのは、目標を達成させることです。達成感が勉強のモチベーションになるからです。
目標が達成できたら、親子で喜んで下さいね。家族で外食するなど気分転換を兼ねた褒美がおすすめです。
勉強のやる気がない原因④「受験のプレッシャーで不安を感じている」
親の期待や塾の競争にプレッシャーを感じている
受験は競争です。どれだけ頑張っても「落ちるかもしれない」という不安は付きまといます。
子供は親の期待を敏感に感じ取るものです。親の期待が大きければ大きいほど、プレッシャーを感じているかもしれません。
「兄弟や友達など周りと比べる」「テストの結果をみて出来ていないところを指摘する」「〇〇以下の学校なら私立には行かせない」などなど、子供にしていませんか?
親は励ましているつもりでしょうし、厳しい声かけは愛情の裏返しだと思いますが、子供はプレッシャーに感じているかもしれません。
口にしていなくても、態度や口調に出てしまうこともあるので、十分に気を付けたいところです。
塾のシステム自体が、テスト結果によってクラス変えや座席順が決まるなど、競争を煽る側面があります。こうした競争に疲れてしまうこともあります。
結果だけでなくプロセスも重視する
周りと比べるのをやめて、これまでの子供と比べるようにしましょう。
以前と比べれば、どこか成長しているはずです。伸びたところに目を向けると、ポジティブな声かけが増えてきます。
受かることもあれば落ちることもあるのが受験です。この事実は受け入れるしかありません。
その上で、中学受験で身につけた学力と学習習慣は、必ず今後に活きてきます。小学生のこの時期は、「学び」から人としての基礎を作っています。
親は子供の代わりに受験はできません。親には、全てをコントロールできません。
合否という結果はもちろん大事ですが、受験勉強を通じてどう成長するか、プロセスに目を向けるようにしましょう。
勉強のやる気がない原因⑤「自分の好きなことを優先したいと思っている」
自分の好きなことを優先したい
例えば、小学校低学年からサッカーをしていて、サッカーをしたいと心の底では思っているかもしれません。
チームメイトはサッカーを思いっきり楽しんでいるのに、塾やテストでサッカーができない。そんな状況に納得できていない可能性があります。
息抜き程度で好きなことをさせてタイミングをみてしっかり断ち切る
4〜5年生の間は、息抜き程度で自分の好きなことをさせてあげるのも良いかもしれません。
子供にとって受験が「自分事」になれば、自然と勉強を優先するようになります。
もしも、そうならないのであれば、親がどこかのタイミングで責任を持って断ち切らせましょう。
難しい判断こそ親が責任を持ってしないといけません。子供に任せていたら、いつまでもダラダラしてしまうものです。
その代わり、中高一貫校に合格したら、中学時代は、高校受験がないので、思う存分、好きなことをさせてあげて下さい。
サッカー部の強い進学校、生物部が有名な進学校など、お子さんの好きなことが思う存分できる学校もあります。
中学受験をすると決めたら、受験生の親としての心構えを見直す
私自身、中高一貫校の教師を30年近く続けてきて、これまでに多くの中高一貫校生を見てきました。
また、2人の子供も中学受験をして、受験生の親も経験しました。子供たちの受験も終わり、少し俯瞰したところから振り返ってみると、いろいろな思いが蘇ってきます。
お子さんのタイプも家庭の教育方針もそれぞれだと思います。正解や不正解は決められないかもしれませんが、私の経験をお伝えします。
親はどうして子供がやる気がないことにイライラしてしまうのか?
やる気のムラも含めて当時の長男の実力
長男の中学受験のエピソードです。
新小4の春休みから入塾して、受験勉強をスタートしました。この時期は、サッカーと両立していたこともあり、長男の中では、サッカー>中学受験だったようです。
やがてサッカーを断ち切り、受験勉強を本格化するのですが、小6を迎えても、常にやる気だった訳ではありません。
さて、休日になると、テスト結果が悪かった単元を教えようと予定を組むのですが、長男は「勉強しない」と反発することがありました。
親の都合や希望を優先していたのだと思います。子供なりに「ちょっと休みたい」と思っていたのでしょう。
やる気のない長男に感情的に怒ったこともありました。
子供のやる気はグラデーションでした。常にやる気がマックスではありません。疲れた時、苦手な単元を勉強している時は、やる気も低下していたようです。
それでも、塾から帰宅は22時過ぎ。週末は特訓講座。サッカーのチームメイトは、その間はサッカーの練習や試合を楽しんでいます。
冷静に思うと、子供なりによく我慢して頑張っていますよね。
子供のやる気のなさにイライラするのは、親の期待値に応えていないから。私の場合は、「勉強すればまだまだ伸びる」「難関校も目指せる」といった欲がイライラの正体だった気がします。
実は、入塾テストの結果から、塾の先生から「難関校を目指せる」と言われていたのですが、本人は全くその気はなかったようです。
この言葉には、多分にビジネストークが含んでいて、上を目指していても合格する保証はどこにもありません。親としては期待してしまいますが、親子で疲弊した挙句、不合格になった可能性は大いにあります。
やる気に波があるのも含めて、小6の長男の実力だったのだと、今なら冷静に思えます。
厳しく接した後になって、長男の寝顔を見ると、「よく頑張ってるな」と思えたし、自分のイライラを反省したものです。
振り返ってみると、中学受験はまだまだ通過点
親子で合格を勝ち取るサクセスストーリーばかりに心を奪われますが、第一志望校に合格できなった受験生は、その数以上いるのです。
第一志望校に落ちた生徒が皆、不本意入学で、不満だらけで中高6年間を過ごしていると思いますか?もしそうであるなら、中学受験がここまで加熱していないはずです。
どの学校に進学することになっても、中高一貫校には魅力が詰まっているのだと思います。だから、これだけ人気になるのではないでしょうか。
やる気がないのも含めて小6時点の子供の実力です。これは受け入れるしかありません。子供はどこかのタイミングで成長します。
中高一貫校で伸びて、志望する大学の合格を勝ち取った生徒を何人も見てきました。
親が我が子に期待するのは当たり前。受験というチャンスをもらえる子供も恵まれている。
それでも、「思い通りにならないのが受験で、中学受験はまだまだ通過点」と親が考え方を変えないと子供の心が折れてしまうのかもしれません。
高校生になった長男は、「学校が楽しい」と言っています。今は、自分の将来のために自分の意思で勉強しています。同級生と競い合っていて、親が口出しすることは何もありません。(嬉しいやら寂しいやら)
もしも子供がやる気がなくて親子喧嘩をしたら、それも必要なプロセスなんだと思います。
【偏差値以外にも目を向けた学校選びに関する記事】
中高一貫校で伸びる生徒は「学習習慣」と「自己肯定感」を兼ね備えた生徒
私は、30年、中高一貫校の教師をしています。ここからは、中高一貫校の教師の立場から感じていることを紹介します。
中高一貫校で伸びる生徒の特徴は、「学習習慣」と「自己肯定感」を持っていることです。
例えば、「授業をしっかり聞く」→「理解できたら問題を解く」→「繰り返して定着させる」といった「学習習慣」があれば必ず成績は伸びます。
逆に成績が伸び悩んでしまう生徒はこれが出来ません。
また、中高一貫校では、同じような学力の生徒ばかりですから、自然と競い合う環境があります。
どこかのタイミングで目標ができるのですが、その時に、「私ならできる!」と思えることが大事です。
目標達成に向けて努力するには熱量が必要で、その根底にあるのが、「自己肯定感」です。
もちろん、第一志望校合格が一番大事だと思いますが、中学受験を通して、「学習習慣」と「自己肯定感」を身につければ、どの中学に入学しても、6年間での伸びは大いに期待できます。
中学受験を決意したら、絶対に「失敗」で終わらせない
中学受験を決断したのは、そもそもは親の意向だと思います。
それ自体は当然だと思うのですが、どんなことがあっても、子供に合格を勝ち取らせて欲しいのです。
「〇〇以下の学校は受けない」「全部の学校に落ちる」「やる気がないから途中でやめる」
子供の意思で始めた受験ではないのに、子供に「失敗した」という気持ちにさせてしまいます。これでは、あまりにも可哀想です。
第一志望でなくても、偏差値が低くても、必ず合格を勝ち取らせて下さい。子供にとってはどんな学校でも「合格」は嬉しいのです。
その上で、子供が「公立中に行って高校受験で挽回したい」と言えば、そうしてあげればいいのです。
(くれぐれも、子供にそう言わせるように仕向けないで下さいね)
中学受験で全部不合格。公立中に入った瞬間から高校受験のための塾通い。子供にしてみれば、双六で言う、「振り出しに戻る」の感覚になってしまいます。
中高一貫校に進めば高校受験がありません。自分のペースで基礎から学び直すもよし、受験で中断していたサッカーを再開するもよし。
曲がりなりにも、受験勉強に多くの時間を費やしてきたのです。子供にも選ぶ権利がありますよね。
ちなみに、たとえ偏差値の低い学校だとしても、そこを第一志望に頑張っている受験生がいます。「誰でも合格できるほど甘くない」のは理解しておかなければいけません。
【中学受験と高校受験の難易度に関する記事】
中学受験は決してゴールではない
中学受験がゴールではありません。
背伸びして合格した学校で落ちこぼれて苦しむ生徒もいれば、ゆとりを持って合格した学校で周りから期待されて伸びる生徒もいます。
言い方はよくありませんが、学歴だけなら、大学入試で取り返せます。中学から伸びて第一志望の大学に合格した生徒をたくさん見てきました。
お子さんのやる気がないのは悩ましいですが、まだまだ通過点と思って、受験を乗り越えて欲しいと思います。
投稿者プロフィール


- 中高一貫校指導歴30年のベテラン教師です。勉強が得意な生徒から苦手な生徒までたくさんの生徒を指導してきました。念願叶っての中高一貫校だと思います。充実した6年間を過ごして欲しいものです。ベテランならではの視点で悩みに寄り添ったアドバイスを心がけます。ちなみに2人の子供も中高一貫校に通っています。保護者としての目線も大事にします。